with Kidney調査
第1回 当事者アンケート①腎臓病が分かったばかりの頃に一番知りたかったこと 調査結果
2023.5.19
― with Kidneyプロジェクト 開催中のアンケート ―
調査目的
当プロジェクトにて慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease、以下 CKD)の治療と生活に関わるドキュメントや情報を全てマネージメントするための、カスタマイズして長期にわたって使える管理のしくみ(仮称「CKDとの上手な付き合い方のしくみ」)を構築するにあたって、腎臓病の方から透析をしている方、移植経験者を含む腎臓病の当事者の方を対象に、本当に知りたい情報や知識などの生の声に耳を傾け、その声を当プロジェクトに反映するためにアンケートを実施しました。
調査概要
調査方法 | Webアンケート |
---|---|
調査対象 | 腎臓病の方、透析をしている方、移植経験者など腎臓病当事者 |
調査期間 | 2023年4月10日(月)~ 4月30日(日) |
有効回答数 | 193名 |
回答者の属性等
G1〜G2 | G3 | G4 (保存期腎不全) |
G5 (透析をしている) |
総計 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
女性 | 6 | 28 | 22 | 33 | 89 | |
~20代 | 2 | ― | ― | ― | 2 | |
30代 | ― | 3 | 1 | 2 | 6 | |
40代 | 2 | 5 | 7 | 7 | 21 | |
50代 | 2 | 17 | 9 | 14 | 42 | |
60代 | ― | 3 | 3 | 10 | 16 | |
70代 | ― | ― | 2 | ― | 2 | |
男性 | 3 | 13 | 14 | 74 | 104 | |
~20代 | ― | 1 | ― | 2 | 3 | |
30代 | ― | ― | 1 | 1 | 2 | |
40代 | 1 | 3 | 4 | 14 | 22 | |
50代 | ― | 3 | 2 | 26 | 31 | |
60代 | 1 | 5 | 3 | 19 | 28 | |
70代 | ― | 1 | 3 | 12 | 16 | |
80代 | 1 | ― | ― | ― | 1 | |
90代~ | ― | ― | 1 | ― | 1 | |
総計 | 9 | 41 | 36 | 107 | 193 |
回答者の年齢とCKDステージ
調査内容と結果
CKDの治療に関わる46個の選択肢から腎臓病が分かってすぐに知りたい知識や情報を5つ選択し、選択肢にないものは自由に記入いただくアンケートを実施しました。結果は以下の通りです。
原疾患ごとや、ご家族に向けた選択肢もあり、腎臓病や生活習慣に関わる普遍的項目が当然多く選ばれる結果となりました。
もくじ
選択肢と回答数(回答数順)[n=193:回答数=965]
選択肢 | 回答数 |
---|---|
1. 食事療法 | 119 |
2. 生活習慣と運動 | 85 |
3. 水分摂取・管理 | 77 |
4. 血圧管理 | 66 |
5. 精神状況:ストレス対処 | 50 |
6. 体重管理 | 48 |
7. カリウム管理 | 46 |
8. 社会生活:治療とお金 | 35 |
9. 社会生活:働くための支援 | 35 |
10. 病状ごとの役立つ情報 | 32 |
11. 薬物療法(服薬管理と飲み方) | 30 |
12. 感染症 | 26 |
13. 年齢層ごとの役立つ情報 | 24 |
14. CKDの定期検査 | 24 |
15. 病状管理:むくみ | 21 |
16. 腎臓病+糖尿病 | 20 |
17. 原疾患ごとの役立つ情報 | 19 |
18. 治療の不安を解消するには | 17 |
19. 薬剤性腎障害/薬物動態 | 15 |
20. 病状管理:乾燥・かゆみ | 15 |
21. 貧血管理 | 13 |
22. 家族向け:食事の準備の工夫 | 13 |
23. 蛋白尿をなぜ抑えるべきなのか | 11 |
選択肢 | 回答数 |
---|---|
24. 社会生活:職場でのコミュニケーション | 11 |
25. 原疾患管理:膠原病、全身性感染症 | 10 |
26. CKDの自覚症状とその理由 | 10 |
27. 血糖値管理 | 10 |
28. CKD検査教育入院 | 9 |
29. CKDの検査とその意味 | 9 |
30. CKDはなぜ心血管疾患を起こしやすいか | 8 |
31. 塩分をなぜ抑えるべきなのか | 8 |
32. 尿毒症管理 | 7 |
33. ヘルプカード活用法 | 7 |
34. 家族向け:ストレス対処 | 6 |
35. 禁煙 | 4 |
36. 早寝早起き休養 | 4 |
37. 社会生活:CKDカードを持とう | 3 |
38. 家族向け:療養・生活のマネジメント | 3 |
39. 病状管理:網膜症 | 3 |
40. 家族向け:接し方 | 3 |
41. アシドーシス管理 | 2 |
42. CKD-MBD管理 | 2 |
43. 排尿を我慢しない | 2 |
44. 原疾患管理:泌尿器科系 | 2 |
45. 家族向け:高齢者の場合のマネジメント | 1 |
46. 原疾患管理:高尿酸血症 | 0 |
透析導入前と導入後、それぞれの回答TOP10
透析導入前はCKDステージG1〜G4(保存期腎不全)までの方の回答と、導入後はCKDステージG5(透析を受けている)の方の回答の比較です。
総合TOP10 | 透析導入前の方のTOP10 | 透析導入後の方のTOP10 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 食事療法 | 119 | 食事療法 | 60 | 食事療法 | 59 |
2 | 生活習慣と運動 | 85 | 生活習慣と運動 | 38 | 水分摂取・管理 | 59 |
3 | 水分摂取・管理 | 77 | 血圧管理 | 27 | 生活習慣と運動 | 47 |
4 | 血圧管理 | 66 | 薬物療法(服薬管理と飲み方) | 21 | 血圧管理 | 39 |
5 | 精神状況:ストレス対処 | 50 | 精神状況:ストレス対処 | 20 | カリウム管理 | 37 |
6 | 体重管理 | 48 | 社会生活:治療とお金 | 20 | 体重管理 | 35 |
7 | カリウム管理 | 46 | 病状ごとの役立つ情報 | 20 | 精神状況:ストレス対処 | 30 |
8 | 社会生活:治療とお金 | 35 | 水分摂取・管理 | 18 | 社会生活:働くための支援 | 24 |
9 | 社会生活:働くための支援 | 35 | CKDの定期検査 | 17 | 感染症 | 17 |
10 | 病状ごとの役立つ情報 | 32 | 年齢層ごとの役立つ情報 | 15 | 社会生活:治療とお金 | 15 |
回答の傾向
選択肢は、「治療や病気の管理に関わること」「心に関わること」「病気に対する知識(治療に直接的に関わらないもの)」「社会生活に関わること」「その他」の5つに大別できます。
「治療や病気の管理に関わること」の選択肢が多いこともありますが、当事者の皆さんの関心事は生活や体調に直結することが大半を占めていることが窺えます。
- 治療や病気の管理に関わること
- 食事療法、生活習慣と運動、水分摂取・管理、血圧管理、体重管理、カリウム管理、薬物療法(服薬管理と飲み方)、感染症、病状管理:むくみ、腎臓病+糖尿病、薬剤性腎障害/薬物動態、病状管理:乾燥・かゆみ、貧血管理、原疾患管理:膠原病、全身性感染症、血糖値管理、CKD検査教育入院、尿毒症管理、禁煙、早寝早起き休養、病状管理:網膜症、アシドーシス管理、CKD-MBD管理、排尿を我慢しない、原疾患管理:泌尿器科系、原疾患管理:高尿酸血症
- 社会生活に関わること
- 治療とお金、働くための支援、年齢層ごとの役立つ情報、職場でのコミュニケーション、ヘルプカード活用法、CKDカードを持とう、家族向け:療養・生活のマネジメント
- 心に関わること
- 精神状況:ストレス対処、治療の不安を解消するには、家族向け:ストレス対処、家族向け:接し方
- 病気に対する知識(治療に直接的に関わらないもの)
- CKDの定期検査、蛋白尿をなぜ抑えるべきなのか、CKDの自覚症状とその理由、CKDの検査とその意味、CKDはなぜ心血管疾患を起こしやすいか、塩分をなぜ抑えるべきなのか
- その他
- 病状ごとの役立つ情報原疾患ごとの役立つ情報家族向け:食事の準備の工夫家族向け:高齢者の場合のマネジメント
自由記述回答
透析をしている方の回答には、腎臓病が分かった時点ではなく現在知りたいと思われる知識や情報が多く含まれていたため、CKDステージ4までの透析導入前の方の回答を中心にご紹介します。
選択式アンケートの回答数から分かる通り、食事療法や治療などの日常的な事柄に関心が高く、この自由記述回答ではさらに踏み込んで塩分や蛋白質の量やコントロール、具体的な治療方法などへの要望が多く見られます。
その他、社会生活や心のケア、社会保障制度へのとまどい、医療者への希望なども寄せられました。
当プロジェクトへの提案
- 腎臓病になったら今後どのような治療プロセスに入るのか期間や医療費が端的に分かるフローチャートのようなものがあれば発症した人が見通しを立てやすくなると思う。私の場合IgA腎症発覚→腎生検(入院3泊)→ステロイドパルス(入院9泊)→扁摘(入院6泊)→ステロイド減薬(3年)→定期受診(隔月)という感じ。
具体的な治療の知識
- クレアチニンを下げ、尿アルブミンを減らす方法。
- クレアチニン値の進行速度と食事の関係。
- 新しい治療・新薬の情報。他の患者さんの服薬事情。
- 年齢、ステージ別の蛋白質量。特に60歳から、サルコペニアにならないための方法など。
- 悪化したら透析や腎移植ありきではなく、できる限り温存する方法があったら知りたいです。
- 透析導入忌避の書籍や民間療法のようなものが本当に効果があるのか知りたい。
- 糖がタンパク尿を増やす事実を先日初めて知った。27年腎臓病、20年糖尿病患者です。
食事療法への具体的な要望
- ステージ事の情報でもそれよりきつい食事療法を受けてるので、それでも食べれるレシピが欲しいです。
- 食事療法の具体的レシピ、栄養相談は漠然と言われて、相談する事が無いです。
- 年齢、ステージ別の蛋白質量。
- 食事管理方法について。蛋白を制限するよう言われているが、抑える工夫が分からないので知りたいです。
- 低蛋白食事療法等について知りたい。
具体的な運動や運動療法の要望
- もともと運動量が多いのですが、ネフローゼになってウォーキング程度に減らし段々運動量を増やしています。運動のしすぎは腎臓に負担がかかるといいますが、どの程度悪いのか知りたいです。
心の悩み、人との関わり
- 話せる人や話せる場所の提供情報を知りたい。
- 体験者の生の声や関わりが欲しいです。
- 腎不全と糖尿病です。病気の事を話せる人が居ません、病院ではそういう場は無いと思います。
- 前向きに治療に取り組むための気持ちの作り方。
透析や移植について
- 原疾患についての情報が少ないのと、移植後のことについて詳しく知りたいです。移植後の衣食住はもちろん、移植後に起こる感染症や移植による副反応(血管、リンパ管の腫れ浮腫み、薬によるもの)、金銭面や仕事など。
社会との関わり
- 患者の症状や悩みを家族や第三者にどう伝えるか? 伝え方で相互理解も進みますが、やり方は違うとワガママと思われたり、クレーマーだと勘違いされてしまうリスクがあるのが悩みです。
- 治療に合わせた働く場所の情報やコロナ禍とかの支援が健常者と同じは無理があるから政治活動や支援団体との繋がりがほしい。
- 障害者雇用をしている会社への透析の理解や普及、会社訪問などがあったら良いのでは?と思います。透析をしていても働きやすい環境が増えると良いと思います。
病気に対する知識
- 高齢の透析をしている方向けの情報が多いように感じるため、若い人の保存期の情報や、低形成腎等の先天性疾患の方の情報があると嬉しいです。
- 腎臓の仕組みと発病による病変・機能の変化について、治療のプロセスと期間など。
- 腎臓そのものについての知識がほしい。
社会保障制度などに関して
- 障がい者年金の相談。
- 自治体ごとに医療費助成の差があるのが悲しい。我が自治体が3級も医療費助成対象になればなと思います。
- 手帳や年金が貰えるという情報。
- 利用できる公的補助の種類。
医療者への希望
- カリウム数値がオーバーした時も、先日医師からステージが悪化しているといわれたときも、それに至るまでデータを基準とした精密な今後のための取り組みなどの情報提示はありませんでした。医師はもっと患者と家族の立場に立ってQOLの永続を目指した情報を提示するべきだし、そのような意識を医師や栄養士に広めてほしい。
- 腎臓病から糖尿病になっても医師からは自分の専門領域以外のことを詳しく説明してもらえない。
- 診断直後はとにかく何を知るべきなのかが知りたいです。完治しない病気という不安しかない中で、食事や行動や治療の今と見通しをどう考えるかなど、わからないことだらけなので指標がほしいです!
- 積極的な医師からの提案、情報がほしい。
その他
- 安易に透析を勧める医者もいると聞いた。患者ももっと勉強が必要だと思う。
- 私は透析を離脱しました。CKDから回復した人の情報を知りたい。
- CKDとは何ですか?腎臓病のタイプとか原疾患とかは、知らされて居ません
- 漢方、東洋医学についても知りたいです
- 管理栄養士への連絡方法、選定方法などを知りたい。
- 病院の選び方を知りたい。
- 保存期の情報と医療費の問題。