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腎臓病の方が知っておきたい災害時の感染症対策
【1】基礎知識編
2021.11.8
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日本は、地震、津波、火山噴火、豪雨など、数多くの災害に見舞われる災害大国です。災害発生時は、ライフラインの途絶、衛生環境の悪化、食料不足からの栄養状態の悪化のほか、さまざまな要因が重なり、感染症発生のリスクは高まります。
災害は突然やってきます。この記事では、災害発生後の避難所における感染症予防の観点から、知っておきたいこと、気をつけるべきこと、備えなどについてご紹介します。
一般的なことに加え、透析をしている方を含む慢性腎臓病患者、腎臓移植後で免疫抑制剤を用いている方などが、特に注意すべきことなども織り交ぜ3回に渡ってお話しします。
なお、コロナ禍での発災への基本的な備えに関しては以下でご覧ください。
コロナ禍での自然災害は、被害の相乗が起きる「複合災害」
2019年末に突然発生した新型コロナウイルス感染症は全世界を混乱に陥れました。そんなコロナ禍において、2020年7月には熊本豪雨水害、2021年7月には静岡県熱海で土石流災害が発災し、多くの方が避難を余儀なくされました。いま私たちが直面しているのは、[新型コロナウイルス感染症×豪雨×土砂災害]や[新型コロナウイルス感染症×地震×津波]などという感染症を含む複合災害です。
災害の連鎖や複合は、被害の「足し算」ばかりか「掛け算」をもたらします。さらに腎臓病や基礎疾患をお持ちの方などは、災害による被害の相乗に加えて病気が重なることとなります。避難生活の長期化で持病が悪化しやすくなるなど、健康な人と比べて感染症を含む体調面でのリスクが高いことを胸に刻んでおきましょう。
災害時に発生する感染症
昨今、「感染症」と言えば新型コロナウイルス感染症を思い浮かべることと思いますが、災害時、被災地で起こる感染症は新型コロナだけではありません。創部感染症、呼吸器感染症、消化器感染症など、さまざまな感染症が発生します。 発災直後に高リスクなもの、避難所での集団生活の中で流行るもの、環境衛生悪化に関連した感染症など、時間の経過と状況によって発生するものが変化します。発生直後〜1週間以内には外傷(ケガ)とそれに伴う皮膚・創部感染症が多く、1週間を過ぎると次第に感染症疾患が急増します。
災害時に問題となる感染症と発生時期
災害時は、平時の診療や治療が受けられない特殊な状況です。もちろん災害も感染症も完全に防ぐ手立てはありませんが、あなたの病気と同じように、よく知り備えておくことが予防と自衛につながります。
参考:避難生活に起因する疾患(感染症以外)
- 粉塵吸入による席や呼吸器障害
- 床の振動、寒さ、寝床の硬さによる睡眠障害と高血圧
- 避難所での食生活による慢性疾患の悪化と筋力の低下
- 飲用水不足、トイレ不足による脱水、エコノミークラス症候群※1、脳梗塞
- 雑魚寝によるエコノミークラス症候群、生活不活性病※2
- 手指衛生、口腔内衛生の悪化による嘔吐下痢症、肺炎
- 車中泊による健康被害(脱水症、低体温症、エコノミークラス症候群、支援の遅れ※3など)
- 非日常的な生活、不安等のストレスによる循環器疾患、うつ状態
- 清潔を保てないことによる皮膚疾患
※1:長時間同じ姿勢のままでいることにより静脈の中に血栓(血の塊)ができて、その血栓が血液とともに流れて肺に動脈を塞いでしまい痛みや呼吸困難などを引き起こす疾患。
※2:動かない(生活が不活性な)状態が続くことにより、あらゆる心身の動きが低下する病気。2004年の新潟県中越地震の頃から災害時に多く発生することが知られるようになった。
※3:避難所では受付時に避難者として登録されるが、車中泊者が避難者として登録されるしくみがない場合は、支援の網からこぼれてしまい、必要な情報も得られずに健康被害のリスクが高まる。健康被害の発見が遅れることも危惧される。
参考
- 内科 = Internal medicine : 臨床雑誌. 124(4):2019.10 124(4):2019.10 p.2183-2190
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