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腎臓病の方が知っておきたい災害時の感染症対策
【2】準備編
2021.11.29
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このシリーズの初回「【1】基礎知識編」では、災害発生直後から避難所生活などにおいて発生するさまざまな感染症や、避難生活環境で起きやすい感染症以外の疾患なおについてお伝えしました。
自然災害と新型コロナ感染症の複合災害下では、避難所一択ではなく在宅、親戚・知人の家、ホテルや車中避難など、分散・個別避難がコロナ禍以前より進んでいます。三密状態の回避のために避難者を分散させることを目的とし自治体とホテル・旅館などが協定を結んだ事例もあり、宿泊施設側もおおむね協力的とのことです。
東日本大震災での劣悪な避難所環境での災害関連死も相次ぎ、2016年の熊本地震では車中泊によるエコノミークラス症候群、その他の自然災害でも避難生活の病気やストレスなどが取り沙汰されました。その教訓から避難所の環境改善が進められていたところにこのコロナ禍で、学校の空き教室や空き家を使う案が浮上するなど避難先も多様化しており、運用のしくみも更新され続けています。今年(2021年)5月に改定された防災基本計画でも、避難所の感染拡大防止対策が強化されました。
わたしたち一人ひとりのパンデミック下での災害対策も、さまざまな視点から見直す必要がありそうですね。そこで今回は、コロナ禍での複合災害下で必要な心構えや準備などについてお話しします。
なお、基本的な災害対策はじんラボでこれまでにご紹介した災害に関する記事や、首相官邸「災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~」などでご確認ください。
事前にできる災害時の感染症対策(一覧)
避難場所、避難経路、災害用備蓄品などの災害準備に加えて、感染症や健康面のリスクを考慮した準備が必要です。具体的には、以下の4点です。
正しい知識と適切な準備があなたとあなたの大切な人を守ります。
①避難行動を考えておく
冒頭でもお話したとおり、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、避難所の過密状態をなるべく避けるための対策が進められています。今一度ご自宅の災害リスクを確認し、避難行動を事前に検討しおくと安心ですね。不必要に避難所を使用すると、本当に必要としている人の場所を奪う結果にもなりかねません。
「避難」とは「難」を「避」けることであり、安全な場所にいる人は避難する必要がないこと、②避難先は避難場所・避難所に限るものではなく安全な親戚・知人宅等も避難先となることなどを覚えておきましょう。
②感染症に罹っていた場合の避難方法
新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどに感染して自宅療養中に、地震や大雨などの自然災害が起きた場合はどうしたらいいのでしょう。
自宅療養中に何らかの自然災害の被害が予想される場合は、早めに保健所に相談して避難先を決めておきましょう。保健所がない市町村の場合の相談先は最寄りの自治体です。感染者の避難受け入れ先は現状では不足していますが、それでもまず相談してください。軽症の場合でも他人にうつす可能性はあるため、基本的に一般の避難所に滞在することは避けるべきです。
もし一般の避難所に行くしか選択肢がない場合は、感染していない一般の避難者と接触しないように区切られた感染者専用のスペースで過ごすことになります。検温・問診所が設けられて、スペースの振り分けが行われます。体調や状況にもよりますが、避難所の滞在はたいていの場合は一時的で、受け入れ先の医療機関などが決まったら速やかに移動することになります。
専用スペースの振り分け
③非常持出品や備蓄品の見直し
感染症対策を意識した備品は、以下の衛生用品を非常用持ち出し袋に入れておきましょう。
- 使い捨てマスク
- 布マスクやウレタンマスクよりも効果が高い不織布マスクが望ましいでしょう。N95やKF94などの高性能のものを準備しても良いかもしれません。感染症対策以外に、口の乾燥対策としても有効です。
- アルコール消毒液
- 手指消毒としてはもちろん、水がふんだんに使えない場合に食器を拭いたり、消臭効果があるため臭いが気になる場所に吹きかけたりといろいろ使えます。
- ティッシュ、ペーパータオル、除菌ウェットティッシュ
- 水不足の場合にテーブルやトイレなどのあらゆる拭き取りに使えます。新型コロナ・インフルエンザウイルスを除去を意識して、なるべくアルコール配合のものを選びましょう。
- ハンドソープ・せっけん
- 手指衛生は感染予防の基本ですね。最近では水がいらないハンドソープなども登場しました。避難所で共用しないように家族または自分専用のものを持参しましょう。
- 使い捨てビニール手袋
- しっかり手を洗えない状況での調理、トイレ掃除など不衛生なものを扱う場合などに便利です。
- 使い捨てビニールエプロンまたはゴミ袋
- 調理時や避難所運営に協力する場合などに使えます。
- 体温計
- 災害用の救急セットを作って、入れておきましょう。
- 携帯トイレ
- トイレを我慢すると健康悪化につながります。避難所のトイレが使えない場合に備えておきましょう。
基本的な非常持出品や備蓄品はさまざまな書籍やウェブサイトで知ることができますが、最近では地方自治体などの災害情報ページなどでもパンデミックを考慮したチェックリストなどを公開しています。
特に、東京都の「東京備蓄ナビ」では、家族の人数や年齢、居住環境やペットの有無などに答えるだけで、あなたに合った必要な備蓄をリストアップしてくれるため、ぜひ試してみてください。
食事や薬の管理は「災害時と透析:災害時の薬・食事の管理」でもご紹介していますが、何をどれだけ備蓄すれば良いかは農林水産省の「災害時に備えた食品ストックガイド」が便利です。乳幼児、高齢者、慢性疾患・食物アレルギーの方などに向けた要配慮者向け版もあります。
④あらかじめ予防接種で免疫をつけておく
ワクチンで予防できる感染症は、予防接種で防ぐことができます。ただ、ワクチンの種類によっては腎臓移植を受けた方は接種できないものもあります。主治医と相談の上で予防接種を受けましょう。
- インフルエンザ
- 毎年少しずつ変異して、免疫をすり抜けて流行します。基本的に腎臓病の方にワクチンの予防接種は推奨されています。
- 肺炎球菌感染症
- 肺炎の原因となる肺炎球菌でおこる病気で、飛沫感染で広がります。高齢の方や免疫力が弱い腎臓病の方などの予防接種が推奨されています。
- 風疹
- 主に飛沫感染で広がる急性感染症です。麻疹・風疹混合ワクチンの2回接種が強く勧められています。
- はしか(麻疹)
- 麻疹ウイルスによる感染症で空気感が主な感染経路です。風疹同様に、国の定期接種ワクチンとして麻疹・風疹混合ワクチンの2回接種が強く勧められています。
- おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
- 飛沫や接触感染で広がります。感染すると2〜3週間の潜伏期間を経て病状が現れます。基本的に腎臓病の方にワクチンの予防接種は推奨されています。
- 水ぼうそう(水痘)
- 水痘・帯状疱疹ウイルスで起こる、感染力が強い病気です。合併症が多く重症化しやすいため国の定期接種での予防が強く勧められています。ウイルスが体内に残り、免疫力が低下した際に強い痛みを伴う帯状疱疹が起きることもあります。
参考
- 岡田晴恵(著)片岡信和(監修)「感染しないひなん所生活 新型コロナウイルスとこわい感染症から身をまもろう」フレーベル館 (2021/3/1)
- 防災情報のページ - 内閣府「令和3年版防災白書」(2020/11 アクセス)
- 厚生労働省「避難所生活を過ごされる方々の健康管理に関するガイドライン」について(2020/11 アクセス)
- NPO法人環境防災総合政策研究機構「新型コロナウイルス感染症流行時の災害と避難環境を考える手引き( 地方自治体編) 第三版 ( 新型コロナ感染症と災害避難研究会( 東京大学大学院情報学環総合情報研究センター客員 教授松尾一郎他)) 」(2020/11 アクセス)
- こどもとおとなのワクチンサイト「ワクチンと病気について>特別な状況のワクチン:腎不全、人工透析患者」(2020/11 アクセス)
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