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【第3回】透析患者の笑いヨガの効果
2016.6.2
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皆さん、こんにちは!第2回目の「私が透析室で笑いヨガを始めた理由」はいかがでしたか?少しでも笑いヨガに興味を持っていただけたでしょうか。(笑)
今回が最後の投稿となりますが、どうぞ宜しくお願いします。
最近では、笑うことが心身の健康増進や改善に有効であると注目され、笑いの効果についてもさまざまな研究が報告されています。笑いには「受け身の笑い」と「自発的な笑い」の2種類があり、笑いヨガは「自発的な笑い」になりますが、どちらも身体的・心理的効果に変わりはないことが実証されています。
第3回目の投稿は、笑いの研究の歴史とともに笑いの効果をご紹介させていただきます。皆さんに笑いの効果を知っていただき、実践してもらえたら幸いです。
笑いと健康の関連性の研究
笑いと疾病・健康との関連性について研究報告がされるようになってきたのは、今から30年前のことのようです。その先駆けとなったのが、アメリカのサタデー・レビュー誌の編集長であり、作家でもあったノーマン・カズンズ氏(Norman Cousins)による自分自身の体験報告です。カズンズ氏は、49歳の時に強直性脊椎炎(背骨や骨盤を中心として全身の靱帯や腱に原因不明の炎症が起こる病気)という難病にかかり、痛みにより歩くこともできず、医師からは元の状態に回復する可能性は500分の1の確率と宣告されました。
彼のすごいところは、診断された当初は落ち込んだものの、発病の原因を考え直前の生活や行動を振り返り、過労やストレスで副腎の機能が低下していたのではないかと思いついたのです。そして、「ストレスなどのネガティブな感情が心身共に悪影響を及ぼす」と書かれた本のことを思いだし、ポジティブな感情を持てば身体に良い影響がもたらされるのではないかという考えに至り、ビタミンCの大量投与と併せて積極的に自分の気持ちを明るくする方法として、「大笑いする治療」を実行しました。
10分間大笑いすると痛みから解放されて2時間ぐっすり眠ることができるようになったのです。さらにポジティブな感情を持ち続けることで症状は改善され、歩くことができるようになり、数か月後には元の編集長に復帰しました。その経過と笑いやユーモアを大切にして毎日笑うこと、希望を持つことを説いた自身の体験記を医学専門誌(New England Journal of Medicine295,1458-63,1976)に発表し、大きな反響を呼びました。彼はその後、心筋梗塞に見舞われるも、笑うことを中心としたプラス思考を持ち続け、心筋梗塞も克服するという2度目の奇跡を起こし、「笑い療法の父」と呼ばれるようになったそうです。
日本でも伊丹氏や昇氏らの笑いはがんへの抵抗力を高めるという実験結果の報告をはじめ、さまざまな研究がなされていますが、笑いの研究が加速したことについては、ノーマン・カズンズ氏の事例が大きく影響していることがうかがえます。
これまで、笑いの効果についてどのような研究がされてきたのか抜粋し、まとめてみました。
1979年 | アメリカ::ノーマン・カズンズ自身の体験に基づく発表(Cousins 1979,カズンズ1981) |
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1985年 | アメリカ:唾液中の免疫グロブリンAの測定(Dillon,Minchoff&Baker) |
1987年 | アメリカ:痛みに対する効果(Cogan,Cogan,Waltz&de Jong-Meyer.1987) |
1989年 | アメリカ:ストレスによるコルチゾールの増加(Berk et al.1989) |
1993年 | ドイツ:コルチゾールの研究(Hubert,Moeller&deJong-Meyer .1993) |
1994年 | 日本:NK細胞の活性が上昇(伊丹・昇・手嶋 1994) |
1996年 | 日本:インターロイキン6の減少(吉野ほか 1996) |
2001年 | アメリカ:免疫グロブリン・NK細胞の活性(Berk et al.2001) |
2002年 | 日本:自律神経への影響(Sakuragi,Sugiyama&Takeuchi) |
2003年 | ストレスレベルの低下(Bennett et al.2003) |
2003年 | 日本:血糖値に対する影響(Hayashi et al.2003) |
2004年 | 日本:唾液中のフリーラジカル活性(Atsumi et al.2004) |
2006年 | 血管に関する影響(Miller et al.2006) |
2007年 | エネルギー消費に繋がる(Buchowski et al.2007) |
2007年 | 健康に影響を与えるメカニズム 5つの可能性を提唱(Martin 2007) |
免疫系、ストレス、痛み、アレルギー、糖尿病、フリーラジカル、血管系などさまざまな側面に対して「笑いの効果」が報告されてきています。現在でも多くの研究がなされ、笑いについての検証は継続されています。 では、笑いには具体的にどのような効果があるのかご紹介したいと思います。
笑いがもたらす8つの効果!笑いはがん予防にもつながる?
①ナチュラルキラー細胞(以後NK細胞とする)が活性化する
私たちの体には、1日に3000〜5000個のがん細胞が発生しています。これらのがん細胞を退治してくれているのが「NK細胞」です。人が生まれつき持っている50億個のNK細胞の働きが活発であれば、がんや感染症にはかかりにくいと言われています。しかしNK細胞の活性は、ストレスを受けたりうつ状態になったりするとその影響で低下するのです。つまり、ストレスの蓄積ががんにまで影響するということをお忘れなく。また、免疫の働きは年齢とともに低下しますので、年齢を重ねるとがんになる可能性が増えるということです。しかし、NK細胞を活性化すれば元気に長生きすることができ、がんにもなりにくいのです。
②記憶力や集中力が高まる
脳内には、記憶をつかさどる海馬(ストレスに弱い特性がある)という器官があるのですが、笑うことによってその容量が増え、記憶力がアップします。また、笑いによって脳内のα波が増加し脳がリラックスモードになります。加えて、意思や理性をつかさどる大脳皮質に流れる血液量が増加することで、脳の働きが活発になります。ある研究では、笑った後にα波もβ波も同時に増えた人が多く、相反する働きが同時に起こるこがわかっているそうです。適度なβ波が出現することで、人間の脳はやる気が出て活性化します。やる気が出るとストレスも緩和され思考力も向上し、認知症予防に繋がるとも言われています。
③ストレスホルモン「コルチゾール」を抑制する
「コルチゾール」は、副腎皮質ホルモンの一種で糖や蛋白質、脂質や骨などの代謝、免疫に関わるホルモンです。身体を構成してくれるホルモンの一種であるため、生命・健康の維持には欠かせません。また、ストレスから身体を守る抗ストレス作用のあるホルモンでもあるため、精神的ストレスを受けた場合にはコルチゾールの分泌が増加します。このコルチゾールが増えすぎてしまうと副腎に負担がかかり、体中のホルモンバランスが崩れ、免疫力が低下し風邪をひきやすくなります。また、寝る前など夜にリラックスするために必要なセロトニンというホルモンを減らしてしまったり、寝ている間の体の修復に欠かせない成分であるメラトニンの働きを邪魔したりしてしまいます。その結果、お肌のトラブルやむくみ、月経異常などが起こりやすくなるのです。しかし、笑うことで、コルチゾールの分泌は抑制できます。
④血行促進
「ワッハッハッ!」と、思いっきり笑ったときの呼吸は、深呼吸や腹式呼吸と同じような状態になります。身体にたくさんの酸素を取り込むことができるため、血中の酸素濃度が上昇します。酸素をたくさん取り込むことで血液の流れが良くなり、新陳代謝も活発になります。笑いヨガ実施前後にサーモグラフィにて血行促進があるのか検証してみました。体幹部の温度上昇がうかがえます。
⑤自律神経のバランスを整える
自律神経には、心身を活発にする「交感神経」と心身を休め回復させる「副交感神経」とがありますが、両者のバランスが崩れると身体のあらゆるところに支障をきたします。通常、起きている時は交感神経が優位になっていますが、笑うと副交感神経が優位になります。交感神経とのスイッチの切り替えが頻繁にされることで自律神経のバランスが調整されます。現代はストレス社会と言われていますが、それは持続的に緊張状態を強いられていることが多いことも関係していると考えられます。笑いには緊張を緩めてくれる働きがあるのです。
⑥運動・ダイエット効果
笑うことは筋肉の活動をともなうものであり、笑うことで心拍数が増加しエネルギー量が10〜20%増加すると報告されています。1日15分笑うことで10〜40kcalのエネルギー消費に繋がると予測されています。エネルギーが消費されることで体温上昇に繋がり、それが免疫系にも影響を及ぼす可能性も考えられています。さらに「ワッハッハッ!」と大笑いするとお腹や頬が痛くなるかと思いますが、腹筋をはじめ、胸筋や背筋、顔の表情筋などを動かすことで筋力を鍛えることにもなりますし脂肪燃焼の効果も得られます。また、腹式呼吸の働きは、腸内の蠕動運動(ぜんどううんどう)を促進するため排便効果も期待できるのです。
⑦幸福感・鎮痛効果
脳内ホルモンであるエンドルフィン(幸せホルモン)は、笑いによって分泌されます。この物質は幸福感をもたらすだけでなく、“ランナーズハイ”の要因ともいわれており、モルヒネの約6倍の鎮痛作用があり、がんの治療に使用されています。
⑧笑顔効果
昔から「笑う門には福来る」ということわざがありますが、いつもにこやかに笑っている人の家には自然に幸福がやってくるという意味の通り、笑顔でいる人の周りには大勢の人が集まり、楽しそうにしていると感じたことはありませんか?
皆さんはどうでしょうか。表情が暗く無表情な人や眉間にしわを寄せている人に近寄って行きますか?「何か怒っているのかなぁ」「話しかけない方がいいのかなぁ」「こっちまで気分悪くなる」など、私ならそう思って近寄らないかもしれません。(苦笑)
きっと、笑顔の人に寄って行くでしょうね。
私の体験からですが、笑顔は周りだけでなく、自分の気持ちまでも和やかな雰囲気に変えてくれます。ですから、気配りや心配りが自然とできるようになり、人間関係もビックリするくらい良い方向に変わっていきます。
笑いの効果、知っていただけたでしょうか。笑いにはすごい力があるのです。ただ、笑いのすごさを知っているだけでは、何の役にも立ちませんからね。(苦笑)
「知る・わかる・できる」の3つがそろってこそ、はじめて「わかった」と言えるものです。
今回は、笑いヨガについて紹介させていただきましたが、皆さんもさっそく実践してみてください!と言いたいところではありますが、まずは、透析生活の中に「笑い」を取り入れることから始めてみましょう。きっと違う世界が見えてくると思います。
「笑い」は、いつでも、どこでも、誰でもタダですから。(笑)
さぁ、笑いのある透析生活を送りましょう!!私もお手伝いさせていただきます。
いつかどこかで、皆さんとお会いできること楽しみにしております。
参考
- 木村洋二(2010)『笑いを科学する――ユーモア・サイエンスへの招待』新曜社
- 昇幹夫(2006)『笑って長生き―笑いと長寿の健康科学』大月書店
- ノーマン・カズンズ、松田鉄訳(1996)『笑いと治癒力』池波書店
- 畑野相子『笑いが脳の活性化に及ぼす影響.人間看護学研究.7.37-42.2009』滋賀県立大学人間看護学部
- 金井雅仁、湯川慎太郎『笑いがストレス状況に対する認知的評価に及ぼす影響.ストレス科学研究.28.55-65.2013』公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンター附属ストレス科学研究所
- 橋元慶男『笑いのエクセサイズのリラックス効果に関する基礎的な研究.催眠と科学.27巻1
- 号41-46.2012』日本催眠学会
- 橋元慶男『笑いアクションが睡眠に及ぼす影響.催眠と科学.28巻1号.1-4.2013』日本催眠学会
- 大平哲也他『笑いを生かしたグループワークが中長期的な心理的健康に及ぼす影響.メンタルヘルス岡本記念財団研究助成報告集(24).5-10.2012』メンタルヘルス岡本記念財団
- 西本真司、山本伊佐夫『笑いとペインクリニック 形から入る笑い療法の鎮痛効果と気の関連性について:第2報.最新精神医学20巻5号.385-390.2015』世論時報社
- 小林廣美『笑いと看護.笑い学研究20.62-69.2013』日本笑い学会
- 山村みづほ、平田弘美『高齢者におけるラフターヨガによる笑いの身体的・心理的効果に関する研究.人間看護研究.13.111-118.2015』滋賀県立大学人間看護学部
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