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【第2回】私が透析室で「笑いヨガ」を始めた理由

2016.4.4

文:種田美和

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皆さん、こんにちは。第1回目の「笑いヨガって何?」はいかがでしたか?
「笑いヨガ」がどんなものなのかご理解いただけたでしょうか。いつでも、どこでも、誰にでもできる笑いヨガ、「ホホホホ」「ハハハハ」と気軽に始めていただけると幸いです!
今回は第2回目の投稿となりますが、私がなぜ笑いヨガを始めたのか?その理由を私のヒストリーを通してご紹介したいと思います。


透析患者さんとの出会い

私が透析患者さんと出会ったのは、今から31年前。私は高校を卒業して看護学生として松岡内科クリニックへ入職しました。
入職当初は主に外来業務が主体でしたので、2階の透析室には滅菌物を持って行く程度でした。もちろん透析患者さんと関わることはほとんどありませんでした。
しかし、透析も学習する必要があるということで、学生1年目の夏休みから透析室での業務が開始となりました。もちろん看護学生の医療行為は禁止ですから、できることは限られており、透析患者さんの誘導や体重確認、お弁当の配膳・下膳、透析室の環境整備などでした。外来業務もようやくできるようになったばかりで、正直なところ「透析室業務かぁ…」「大丈夫かな」と不安しかありませんでした。
そんな不安を抱えながら透析室業務1日目を迎えました。
透析室に入った瞬間に感じたことを今でも鮮明に覚えています。当初使っていた人工腎臓用透析装置は、ドレイクウィロック社の51-A型の手動式だったかと。

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透析に関する知識も技術もない看護学生の私は「何でこんなに機械が並んでいるの?」「患者さんの顔が黒い」「看護師さんが走り回っている」と、初めて見た透析室の光景に驚くばかりでした。
そんな中で忙しい看護師に挨拶をしても「はい、はい」との返答だけ。何をすればよいのかもわからずに突っ立っているところへ声をかけてくれたのが透析患者さんでした。「学生さん、透析の勉強?」と聞かれ「はい。よろしくお願いします」と返答すると「初めてでびっくりしたでしょう。頑張って覚えてね」と笑顔で話しかけてくれました。患者さんからの優しい声かけで気持ちがとても楽になりました。それが私と透析患者さんとの出会いのはじまりでした。
月日の経過とともに患者さんとの距離は近くなり、いろいろな話を聞かせていただきました。ご家族のこと、透析導入時の気持ち、これからの生活のことなど。「もしかしたら、看護学生の私の方が担当看護師より患者さんのこと知っているかも」なんて思うこともありました(苦笑)。
更に月日が経過し31年。今振り返ってみると、透析患者さんから教えていただいたこと、叱られたこと、語りつくせないです。私は、家族より長い時間を共にした透析患者さんに支えられて成長できたことに感謝の気持ちでいっぱいです。


時代とともに変化する透析医療

30年前の透析医療は「天秤ばかり」で体重を測定、看護師がチェックし、カルテに記載(手書き)していました。若い世代の方はご存知ないですよね。数年後には患者さん自身で測定し、黒板に名前と体重を書いていました。
体重増加が多いと看護師に叱られるので、嘘の体重を書く患者さんもみえたので学生による体重確認となりました。患者さんはきっと監視されていると思ったかもしれませんね。でも、体重計の前では必ず患者さんと話ができていましたのでコミュニケーションの場になっていたようにも思います。

人工腎臓用透析装置も徐々に変化してきていますが、当初は手動でしたのでプライミングを止め忘れると生食バックは空になり、圧がかかることで異様な音が透析室に鳴り響くのです。「○○さん、ポンプとめて!」「やらかした…こっちも」と苦笑いしていました。
朝の透析室はバタバタしてはいましたが、笑いのある透析室だったように思います。また、透析中の血圧低下は日常茶飯事で下肢の痙攣を訴える患者さんも多かったです。看護師は補液を持って走り回っていました。 透析室から聞こえる看護師の声は「寝たらダメ!」「目を開けて!」と言いながら、ベッドサイドへ足を運ぶことが多かったです。

透析医療の進歩はめざましく、今では透析装置の自動化や電子カルテの時代となってきました。看護業務も医療の進歩に伴い精密化・複雑化・多様化してきていますので、看護の責任も増大してきています。ですから私たち看護師には看護業務を安全に、かつ効果的・効率的に行える能力が求められています。本来ならば看護師業務の効率化により、質の高いケアを実現できているはずなのですが、患者さんのベッドサイドへ足を運ぶ回数が減ってきているように感じている今日この頃です(反省)。


人間関係の希薄化

現代社会は人間関係が希薄であると言われています。確かに高度情報化社会が進み、インターネットといった新たなインフラが出現し、パソコンや携帯電話によって不特定多数の人とコミュニケーションをとることが容易になりました。とても便利な世の中になりましたよね。
しかし、それで良い人間関係の構築に繋がっているかというと、必ずしもそうではないように思います。誰かと交流するといえば、相手に会いに行って、対面して、同じ時間を共有することが基本だったと思います。確かに面倒を感じることもありましたし、効率も悪かったと思いますが、ひとつひとつの言葉のやり取りが心に刻み込まれ、その人とより親密な人間関係が構築されていたように思います。今では休憩時間でも、それぞれがスマホ画面で個々の世界を持ち、周りもそれぞれの領域に踏み込まないのが暗黙のルールになっているかのようです。これでいいのかぁと思いながらもスマホ画面を見ている自分が存在しています。
このような状況の中、患者さんから「何か楽しいことないかなぁ」「孫がくるのは金が必要な時だけ」「いつ死んでもいい」と言った声を聞くことが多くなりました。ある患者さんは「生きていることが辛い」と。この言葉はとても衝撃的でした。

30年前の透析室には患者さんと看護師、患者さん同士の会話がありましたし笑いがありました。
今は待合室で患者さん同士の会話もなければ、下を向いて座っている姿を見かけることもあります。
これでいいのか?と自分自身に問うようになり、私がすべきことは何か?と考えているところで私にヒットしたのが「笑い」でした。いろいろ模索していると「笑い療法士」という資格を目にし、これだ!と思いました。


笑い療法士になる

笑い療法士とは、笑いをもって自己治癒力を高めることをサポートする人のことです。一般社団法人癒しの環境研究会(理事長=高柳和江)にて認定されており、11期生までにおよそ785名が全国各地で実践を重ねています。

笑い療法士になって驚いたのは、見た目より打たれ弱い私自身の変化です。笑いの凄さを体感して気づきました。そうだ、患者さんに「笑いだ!!」と。

患者さんは、不安・辛さ・恐怖を抱え、笑おうと思ってもなかなか笑えません。だからこそ心温まる笑いを引き出し、笑いを拡大することが必要だと思っています。
笑い療法士は特別な存在ではありません。私自身が患者さんと心の交流をしていくなかで模索し、単に援助の手を差し伸べるだけではなく、患者さん自身の生きる力を引き出すことができ、種田さんといるといつのまにか笑っている、そんな笑い療法士を目指しています。

笑いのある透析生活を送ってもらいたい。ただそれだけの思いからはじまり、笑いをどのように活用すべきか、患者さんにもできることは、と模索していたところ次にヒットしたのが「笑いヨガ」でした。


笑いヨガという選択

どんなものなのか?と興味津々に笑いヨガリーダ講習に参加しました。
「えっ???」「私には無理かも…」と思ったのが研修1日目。2日目には自分をさらけ出そう!と心に決めて取り組んだところ、気持ちがすっきり、何とも言えない心地よさを感じたのです。
私が「えっ??」と思ったのですから、患者さんだってそう思うに違いないと気軽な気持ちで実践してみました。
すると、ミラクルです!!患者さんの表情に変化が見られたのです。
眉間にしわを寄せていた患者さん、下を向いていた患者さん、みんなが笑顔になったのです。そんな患者さんの笑顔は私の元気の源に変化していきました。笑いヨガの選択は正しかったと心の中で思いました。

人間にはもともと自然治癒力があります。そこにやる気が加わることで、自己治癒力が高まります。日常生活おいても病気に対しても前向きであれば、生存率が高まることは論文で明らかにされています。
患者さんのストレスを少しでも軽減させ、前向きな気持ちになる一つの方法としての笑いヨガ。

私が透析室で笑いヨガをはじめた理由

私が透析室で笑いヨガをはじめた理由は、透析患者さんに笑いの効果を体感していただき、少しでも前向きな気持ちで透析生活を送っていただきたいという気持ち、ただそれだけです。

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種田美和

種田美和
岐阜県大垣市の医療法人社団大誠会の看護師で笑いヨガリーダー。
およそ30年にわたり透析看護に従事しています。趣味はゴルフとカラオケ。私の癒しは、飼い猫のジジという名の黒猫です。透析患者さんにも癒しが必要と思い、5年前に「笑い療法士」の資格を取得しました。
その後は「笑いヨガ」のリーダーも取得し、透析医療の現場に笑いのある生活を広げ、笑いにより患者さんの心のサポートをしています。

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