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慢性疾患セルフマネジメントプログラムの紹介【第3回】
ワークショップで異なる慢性疾患患者同士で病気の経験を共有する

2015.11.12

文:よしいなをき

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協力:特定非営利活動法人 日本慢性疾患セルフマネジメント協会

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この連載の【第1回】では患者が慢性疾患と向き合うため、自己管理(セルフマネジメント)のスキルを身に付けるワークショップ「慢性疾患セルフマネジメントプログラム」(CDSMP)の概要を紹介をしました。そして【第2回】では、日本慢性疾患セルフマネジメント協会の事務局長の武田飛呂城さんに協会が推進してきた活動や今後の取り組み等を伺い、患者同士でお互いを支え合う仕組みづくりへの武田さんの想いをお伝えしました。

今回はじんラボ特別研究員の私が実際にCDSMPワークショップ(全6回)に参加し、そこで行われたワークショップの内容や、他の疾患の患者の方々との交流の様子を紹介します。

過去の慢性疾患セルフマネジメントプログラムのワークショップの様子過去の慢性疾患セルフマネジメントプログラムのワークショップの様子


ワークショップ初日に参加して

2015年6月6日から東京会場で開催された「慢性疾患セルフマネジメントプログラム」(CDSMP)のワークショップに参加しました。場所は東京のJR山手線「新大久保駅」から徒歩5分にある東京山手メディカルセンター(旧・社会保険中央総合病院)内にある会議室で、受講料は全6回で3,000円です。

およそ1ヶ月半に亘る全6回のワークショップに参加するため、土曜日の午後はしばらく新大久保へ通いました。

会議室に入るとロの字に並べられた長テーブルにすでに数人の受講者の方々が着席していました。部屋の前方のホワイトボードには、当日ワークショップの説明で使用する模造紙が貼り出されています。ホワイトボード前の2人のリーダーの方が笑顔で挨拶してくれました。

初日の受講者は私を含む6人、初日は都合が悪く出席できない方もいらしたので受講者は全7人です。この日の出席者が揃うとすぐに自己紹介が始まりました。進行役(リーダー)はニックネームがキュウさんとケイさん、お二人とも慢性疾患をお持ちです。受講者の方々は1型糖尿病、子宮体がん、潰瘍性大腸炎など、それぞれ慢性疾患があります。呼んで欲しいニックネームを名乗り、ご自身の病気の説明と病気から体験したことなどを簡単に話しました。

自己紹介後はリーダーの方からワークショップを行う目的として次のような話がありました。

CDSMPによるワークショップを行う目的

  • 慢性疾患をもつ人が、自分の病気のことをよく知ることが大切
  • 治療とともに自分の生活や仕事、楽しみを守ることが大切
  • そのためにはセルフマネジメント(自己管理)と患者自身も治療に加わることが大切

また、このワークショップで学ぶ「セルフマネジメントに必要な道具」として、次の項目が紹介されました。

セルフマネジメントに必要な道具

  • 運動
  • 意思決定
  • アクションプラン
  • よい呼吸法
  • 感情の理解
  • 問題解決
  • 心を活用する
  • 睡眠
  • コミュニケーション
  • 健康な食事
  • 体重管理

これらの内容を全6回のワークショップを通じて学習します。


最初のブレインストーミング・
心と体のつながり/気を紛らわせる方法

ワークショップは、リーダーからの講義のほか、ブレインストーミングという話し合いの方法も用いて進められます。ワークショップ初日はオリエンテーションや自己紹介に続き「心と体のつながり/気を紛らわせる方法」という演習が行われました。慢性疾患と長く向き合う中では、病気からの苦痛や痛み、治療に対する不安、病気を通じての人間関係に対する悩みなど、患者の心の負担となることが数多くあります。心と体は繋がっていて、心の不安が身体へ影響してしまうことから不安を紛らわせることが大切です。そこで「気を紛らわせる方法」として考えられるものを、受講者からブレインストーミングで募ります。その際、リーダーからはブレインストーミングの約束として次のことが説明されました。

  • ブレインストーミング中は誰でも発言できる(無理に発言する必要はない)
  • ブレインストーミング中は、出された提案に意見を言わない
  • 質問がある場合はブレインストーミング終了後に聞く

これらの約束が事前に取り決められているため全ての受講者が安心して発言できます。

受講者はみな初対面でしたが、各自の経験などから得られたさまざまな方法が少しずつ提案されました。提案はリーダーがホワイトボードに書き出し、その場で共有します。

ホワイトボードに書き出された提案

【テーマ】気を紛らわせる方法
  • 湯船に浸かりながらラジオを聴く(行動)
  • 友だちと話す(行動)
  • 子供のことを考える(心を使う)
  • 散歩をする、自転車に乗る(行動)
  • 音楽を聴く(行動)
  • 遠くの景色を見る(行動)
  • 本を読む(行動)
  • 買い物をする(行動)

どれが正解でどれが不正解ということではなく、これらの提案の中から自分に合ったものを取り入れればよい という考え方です。また、この中の1つ「子供のことを考える」は、心を使った気の紛らわせ方であり、心を使った方法は身体的な障害がある場合でも実行可能であることや、強い痛みがあるときに他のことを考えることで、痛みがある時間の経過を短く感じることができると、リーダーから説明がありました。

ブレインストーミングは、誰かに教えてもらうというものではなく、お互いが対等に意見を聞き合い、その場にいる人たちの間でアイデアを共有する方法でした。

この日は他に「よい睡眠について」をテーマにしたブレインストーミングも行いました。


次週までに達成する目標(アクションプラン)を発表する

ワークショップ一日目の終わりに、アクションプランについて説明がありました。アクションプランとは、1週間単位で自分が達成したいと思う目標(=アクションプラン)を立てることです。目標は大きすぎるものではなく、達成可能な小さなものを立て、達成が難しいようであれば途中で他の目標に変更しても構いません。初回のみリーダーのお二人が次回開催日の前日に電話かメールで達成状況を確認します。アクションプランは受講者の無理のない範囲で5つの質問に答える形で立てます。

アクションプラン:よしいなをきの場合

  • 何を?
  • どれだけ?
  • 1日のうちにいつ?
  • 週にどのくらいの頻度で?
  • 自信レベル
  • :自転車に乗る
  • :多摩川の河川敷まで6キロ
  • :朝8時〜9時までの間
  • :週2回
  • :レベル8

※自信レベル:アクションプランを実現できる自信を数値化したもので、10を自信満々、1を全く自信がないとしたときにどの程度か示すもの。実現可能なプランである目安として、7以上が望ましい。

このようなアクションプランを隣の受講者の方と相談しながら決めていきます。リーダーを含む全員がアクションプランの宣言を行い、翌週のワークショップの最初に達成できたかどうかの振り返りを行います。

2回目以降のワークショップの流れ

  • 先週のアクションプランの振り返り
    (達成できたか? できなかった場合、他にできたことを発表する)
       ↓
  • 2〜5つ程度の演習
    (リーダーからの講義、ブレインストーミングを含む)
       ↓
  • 次週のアクションプランの検討

全6日間のワークショップに参加して

当初は全6回のワークショップに参加できるか少し心配でしたが、1回あたりの開催時間が2時間半と短く、実際はアッという間でした。全ての回に無事参加できてホッとしています。

全6日間で行ったブレインストーミングでのテーマ

  • 困難な感情への対処
  • 息切れ、息苦しさの対処、予防する方法
  • 医療に関する将来計画を立てるのがなぜ難しいのか
  • 薬を飲み忘れないようにするには
  • 落ち込んだりした時の気分の対処法
  • 災害が起きた時に自分が困ること
  • 災害が起きた時に薬の不足を避ける方法
  • 医療者との関係で起きる問題は何か
  • など

ブレインストーミングは必ず発言しなければいけないというものではなく、他の受講者の発言を聞くだけでも構いません。異なる慢性疾患の経験から得た提案から、自分には無かった考え方を知ることもできました。例えば「災害が起きた時に薬の不足を避ける方法」というテーマでは、次のような提案が挙げられました。

災害が起きた時に薬の不足を避ける方法

  • 勤務している職場に薬のストックを置いておく(帰宅困難な場合)
  • お薬手帳を常に持ち歩く
  • 自宅の中で分散して保管しておく(建物の倒壊などに対して)
  • 自宅近くの救急病院を事前に調べておく
  • など

他にリーダーの方にお話いただいたブレーンストーミングのテーマ例は次のものがありました。

  • 気をそらす、紛らわせ方
  • 私メッセージ(医療者や自分に関わる相手とのコミュニケーションの仕方)
  • 食事のバランスガイド
  • 問題解決法
  • 筋肉のリラクゼーション(リラックス)
  • 口腔衛生について

慢性疾患セルフマネジメントプログラムは特定の疾患に特化したものではありませんが、多くの慢性疾患の患者が取り組めるようなテーマを選定してあり、患者に必要な病気との向き合い方について広範囲に学習できる仕組みだと思います。参加期間は長く設定してありますが、1回の時間が短かく参加者への身体的負担がかからないよう配慮してあります。回を重ねるに従い仲間意識が芽生え、次第に友達に会うための会合に参加するような気持ちになっていました。

本プログラムの良いところは、学習面だけに限らず他の疾患の方との交流により、病気で苦しんでいるのは自分だけではなく、他にも多くの人がもっと大変な思いをしているということに気付くことだと思います。私は「自分の息子が学校の検診で尿蛋白を出し、自分の病気が遺伝しているのではないかと心底心配した」とある1型糖尿病の方に話しましたが、その方はまるで自分のことのように涙を浮かべて私の話を聞いてくれました。その方は自分のご両親のことを思い出されたそうです。疾患は異なっていても、患者として同じような経験をしていることから、共感が生まれることに気がつきました。これはじんラボが主催するピアサポート活動「じんサポ」にも通じるものだと思います。

ワークショップの帰り道には、受講者同士でお互いのことを話しました。普段の日常生活の中では自分の病気のことについて話す機会はなかなかありませんが、お互いが患者であることやワークショップで病気の経験がすでに語られていることから、自然と話しやすい雰囲気が生まれていました。

お互いの経験を語ることで、自分の経験が患者仲間にも役立てることができるという気持ちが、慢性疾患セルフマネジメントプログラムに対する満足感を生んでいるのだと思います。


慢性疾患セルフマネジメントプログラムの詳細については
下記までお問い合わせください。

特定非営利活動法人 日本慢性疾患セルフマネジメント協会
ワークショップ開催スケジュールのページ外部サイトへ

次回は、慢性疾患セルフマネジメントプログラムを
受講された方の感想をお送りします。

【お知らせ】

第1回Sanofi - Rainbow Across Borders Asia Pacific Awardのグランプリを受賞!

特定非営利活動法人 日本慢性疾患セルフマネジメント協会(理事長:伊藤雅治)が、第1回 Sanofi - Rainbow Across Borders Asia Pacific Award グランプリを受賞されました。

同賞は本年、パリに本社を置くグローバル製薬企業のサノフィ社と、シンガポールを本拠地とする患者支援団体 Rainbow Across Borders が協働して創設した賞で、アジア太平洋地域における患者会/患者支援団体の成功事例の共有を目的とし、慢性疾患を持つ人たちの健康改善に貢献する取り組みを顕彰するものです。 今回、同賞の選考にはアジア太平洋地域の12カ国から58の活動がエントリーされました。

選考基準は①その活動のデザインや内容が優れていること、②その活動が結果を出し社会に影響を与えていること、③その活動(からの学び)を他の団体においても再現可能であること、の3点で、選考委員による採点の結果、上位10組がグランプリとして表彰されました。

授賞式はシンガポールで行われ、武田飛呂城事務局長が賞状の授与を受けました。

シンガポールの受賞式にて表彰を受ける武田飛呂城事務局長シンガポールの受賞式にて表彰を受ける武田飛呂城事務局長

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よしいなをき

よしいなをき
透析はしていますが普段はスポーツ自転車に乗って 体を鍛えています。
仕事は、平凡なサラリーマンですが、透析の時間を利用して、ブログを書いたり、小説を書いたりしています。

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