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慢性疾患セルフマネジメントプログラムの紹介【第1回】
ワークショップで「自己管理」のスキルを身につける

2015.8.24

文:よしいなをき

2425

協力:特定非営利活動法人 日本慢性疾患セルフマネジメント協会

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患者を取り巻く課題とは

患者を取り巻くさまざまな課題患者を取り巻くさまざまな課題

私たち透析患者は普段多くの課題と共に生活しています。人工透析を受けるための通院はもちろん、食事、服薬、運動、家事や仕事、人との付き合い、自分自身の感情など、課題はさまざまです。
「長い時間透析を受けなければならない」
「食事の管理をしっかりしなくては」
「数多くの薬を飲まなくてはならない」
といったことに取り組みながら、悩んだり、病気の症状に苦痛を感じることもあります。
また慢性疾患を持つ患者として、長く自分自身の病気と向き合う必要もあり、感情をコントロールしなくてはなりません。もし病気向き合うことを1人きりで行わなければならないとしたら、それは患者にとって精神的にも肉体的にも大きな負担になるかもしれません。

今回は、長く付き合わねばならない慢性疾患と向き合うために、自己管理(セルフマネジメント)のスキルを身につける研修「慢性疾患セルフマネジメントプログラム(CDSMP)」をご紹介します。


慢性疾患セルフマネジメントプログラムとは

慢性疾患セルフマネジメントプログラム(CDSMP)は、1980年代から米国のスタンフォード大学医学部患者教育研究センターで開発が始まりました。慢性的な病気を持つ人たちのための実践的な教育プログラムであり、2005年に日本慢性疾患セルフマネジメント協会(2006年に特定非営利活動法人格を取得)が日本に取り入れ、各地でこのCDSMPを展開しています。

長い期間病気と向き合ううちに、患者は健康な人と自分を比べてしまったり、また、できないことやあきらめたことに捉われて落ち込んでしまうことが少なくありません。CDSMPでは以下6つのテーマに取り組み、グループでワークショップを行います。

CDSMPで学習する6つのテーマ

1. 自分の感情への対処

2. 日常的な運動

3. 薬を正しく使う

4. 周りの人とよい関係を作る

5. 適切な食生活

6. 治療についてよく理解する

日本慢性疾患セルフマネジメント協会「プログラムの内容」外部サイトへより>


プログラムはどのように進められるのか?

CDSMPは1回2時間半を全6回のワークショップ形式で開催します。ワークショップは8〜16人の患者のグループで行われ、リーダーと呼ばれる進行役2人も慢性の病気を持つ患者です。グループの中で上記の6つのテーマについて自分の体験を話し、また他の参加者の話も聞きながらゆっくりとしたペースで学びます。

CDSMPでは「ブレインストーミング」という話し合いの方法を用います。例えば睡眠に関する課題でテーマは「よい睡眠をとるために」とした場合、参加メンバーがアイデアを次々に話してホワイトボードに書き出していきます。

テーマ「よい睡眠をとるために」

  • 適度な疲れを感じるように、日中に体を動かす
  • 寝る前に軽いストレッチをする
  • リラックスできる音楽を聴く
  • 心地よい寝具を使う

このようにそれぞれ患者としての経験や体験を通して生まれたアイデアを挙げていき、自分にとってよいアイデアがあれば採用します。リーダーが講義を行う部分もありますが、基本的に参加者同士が会話を通して考えていく形式になっています。

このCDSMPには特定の疾患に限らずさまざまな慢性疾患を持つ人が集まりますが、病気は異なっても経験が似ていたり、全く異なる経験を聞くことにより自分では気がつかないような視点でのアイデアや工夫に触れることもできます。

また、ブレインストーミングでは多くの意見を出してもらえるよう、「ブレインストーミング中は出されたアイデアに対して意見を言わない」「アイデアについての質問はブレインストーミング終了後尋ねる」などの約束を設けています。この約束があることで誰もが否定されることなく安心して話せますし、焦点を絞ったアイデア出しが可能となっています。


自分で決めた計画を実行するための仕組み
ー アクションプラン

ワークショップを通じてさまざまな慢性疾患を持つ仲間との交流が深まり、多種多様な意見を聴く中で、参加者は自分自身がどのように病気と向き合っていくかという意識が高まります。また各回のプログラムの終わりに、これからの1週間で自分が実行したいと思う実現可能な行動計画(アクションプラン)を、次の5つの質問に答える形で立てます。

アクションプランのための質問

  • 何を? (例:ウォーキング)
  • どれだけ? (例:5000歩)
  • 1日のうちにいつか? (例:夕方ごろ)
  • 週にどれくらいの頻度で (例:週3回)
  • 自信レベル (例:レベル7)

自信レベルとはアクションプランを実現できる自信を数値化したもので、10を自信満々、1を全く自信がないとしたときにどの程度か示すものです。実現可能なプランである目安として、7以上が望ましいとされています。

アクションプランは健康上の目標でなくてもやりたいことであれば何でも構いません。しかし、健康上の目標の達成は個々人の普段の生活の中ではなかなか難しいため、CDSMPへの参加を機会にやってみるのも良いのではないかと思います。グループワークで自分のアクションプランを宣言し仲間同士で励まし合ったり、次の回では自分の行動を振り返り発表するため、より達成できるようになります。


現在CDSMPは全国各地で開催され、毎年150〜200名ほどの参加者がいます。また、参加者同士の連帯感が生まれることから、受講後の繋がりを残すための同窓会が開催されたり、再度受講するリピーターの方もいたりと、慢性疾患を共に乗り越える仲間作りの場として広がりを見せています。

自分の病気に対する課題に取り組むにはうってつけの、仲間とともにフォローし合うプログラムです。興味のある方は是非、下記までお問い合わせください。

特定非営利活動法人 日本慢性疾患セルフマネジメント協会
ワークショップ開催スケジュールのページ外部サイトへ

次回は、日本慢性疾患セルフマネジメント協会事務局長・武田飛呂城さんに、協会の活動について詳細をお話しいただきます。ご期待ください。

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よしいなをき

よしいなをき
透析はしていますが普段はスポーツ自転車に乗って 体を鍛えています。
仕事は、平凡なサラリーマンですが、透析の時間を利用して、ブログを書いたり、小説を書いたりしています。

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