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エピソードからの学び

【第3話】生活と透析

2017.8.21

文:松岡由美子

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梅雨が明け本格的な夏を迎えましたが、お元気でお過ごしでしょうか。
上野不忍池は池一面に新緑の蓮の葉が広がり、ところどころにピンク色の大きな蓮の花が顔を出しております。池周辺は連日お花見の人々で賑わっています。お時間がございましたら是非いらしてみてください。

皆さんにも私にも、人には何かしら役割があると思います。家族のため、近くにいる人のため、大切な誰かのために頑張って生活しています。
しかし週3回ほぼ1日おきの通院は、さぞかし生活に影響を与えることになるでしょう。


20年程前に透析導入したYさんは、認知症の父親と2人暮らしでした。透析が必要になり通院しなくてはならなくなりましたが「自分が透析をしている間、父を一人にしておけない」と透析導入を先延ばしにしていました。今なら介護保険制度が整っていますが、当時はまだそのような制度がありません。
福祉事務所に相談し老人福祉制度を利用して、何とか透析日だけホームヘルプサービスやデイサービスが受けられるようになり、Yさんは安心して透析を導入することが出来ました。その後、介護保険制度が制定されYさんの負担はかなり軽減されたようです。


会社員のTさんは、残業が多く週2回の透析で透析時間も4時間できずにいました。
透析不足で血液検査の結果も良くありません。先生からは「透析を受ける時間を確保してください。仕事より命の方が大事でしょう。」といつも言われていましたが、Tさんは「生活の方が大事です。」と答えていました。
その頃Tさんには受験生のお子さんが2人いました。教育費がかかり、多少無理をしても仕事をしなければならない事情がありました。Tさんと相談し、祭日など仕事がお休みの日は透析時間を延長し、透析日でない場合は臨時透析を行うことになりました。もちろん、検査結果は管理目標値内になることが多くなりました。
数年してTさんから透析を週3回にしたいと希望がありました。透析時間も5時間になりました。Tさんは「やっと子供たちが自立して余裕がでてきました。これからは自分の身体のために時間を使います。」と話していました。


高齢のBさんが住む島には透析施設がありませんでした。透析療法が必要になると、本土の病院に入院するか転居をしなくてはなりません。島と本土を結ぶ交通は船か小型飛行機で、天候不良だと運航中止になってしまいます。そのため透析を導入したら何があっても島に戻ることは出来ませんでした。住み慣れた土地を後にして、二度と戻れない辛さと新しい土地での生活への不安、無念やるかたない思いで一杯だったことでしょう。
島には入院もできる診療所がありました。その診療所で透析が出来るようにしてほしいと島の住民が村長に嘆願し、1年後には島で透析が受けられるようになりました。Bさんは島に戻ることができ、以前のように家族と共に生活しています。


透析導入は、今までの生活を一変させてしまうほどのとても大きな出来事です。
命のために透析療法を受けていただかなければなりません。ただ、全てを犠牲にして受けるものではありません。あなたが今までの生活を維持することが難しくなった時、近くの誰かに相談してみてください。あなたの負担を軽減する方法が見つかるかもしれません。我慢せず、諦めずに自分にとって都合の良い「透析療法を取り入れた生活」を送っていただきたいと思います。

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松岡由美子

松岡由美子
上野透析クリニックで看護師をしています。
患者さんとお話する機会が少ない手術室から、存分にお話ができる透析室に移動し28年が過ぎました。皆さんから怒られ、教えられ、支えられたお陰で今も続けることが出来ています。これからも皆さんと透析室で幸せの種をまき合い、一緒に良い時間を過ごしていきたいと思っています。

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