みんな、旅してる?腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
【第1話】旅行のすすめ
2023.5.22
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透析していても旅はできる!
突然ですが、皆さん。旅、してますか?
初めまして、銀次朗と申します。
私は10年前の2013年、急性心筋梗塞を発症しました。一命は取りとめましたが、そこから腎臓の機能が低下し、5年前の2018年より透析を受け続け、現在に至ります。
旅行やドライブが大好きな私ですが、透析を受け始めたばかりの頃はそれどころではなく、仕事のモチベーションを維持することで精一杯でした。休日はひたすら寝て、体力温存に努める日々。仕事と透析の両立は何とかできていましたが、以前と比べて制約の多い生活はストレスが多く、旅行どころではありませんでした。
透析を受け始めて半年後、仕事で大阪へ出張に行く機会がありました。その時に、かかりつけの病院ではない他の施設でも、臨時透析が受けられることを知りました。透析さえ受けられれば、遠出もできるし長期の旅行もできるかもしれない。さっそく、臨時透析について調べ始めました。自分の中で、気持ちが少し楽になった瞬間でもありました。
それから、「どうせ旅行に行くなら、気になる医師のいる病院で透析を受けてみよう」と思い立ち、いろいろなホームページやブログなどを読みあさりました。
旅の計画を立てよう
最初の目的地は、福島県に決めました。東日本大震災後、まだまだ復興途上で観光産業も伸び悩んでいる中、状況を自分の目で見てみたいという思いと、気になる医師の病院が臨時透析を受け入れていたことが決め手となりました。
まずは病院の手配です。福島の病院に連絡をして、ベッドの空き状況を確認してから、自分の通っている病院とやりとりをしてもらいました。当日持参するものの確認や、数日分の透析の記録などが必要になります。
次に細かい旅程の計画をします。私の居住地である福岡県と福島県の間には直行便がないので、いくつかの選択肢を考えました。
なお、私は陳旧性心筋梗塞(ちんきゅうせいしんきんこうそく)を持っており、起立性低血圧を発症することがあります。立ち続けていると低血圧になり気を失うこともあるので、外では車いすを利用することが多いです。歩行に関しても長距離や坂道は歩けません。旅行の移動については、制限は多いほうだと思います。
1 | 福岡空港羽田空港東京駅福島駅 |
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2 | 博多駅東京駅福島駅 |
3 | 福岡空港伊丹空港福島空港 |
4 | 福岡空港成田空港福島 |
5 | 福岡空港仙台空港福島 |
飛行機レンタカー新幹線電車 |
近頃は全国旅行支援などもあり、経路や予約サイトによって値段が大幅に変わってきます。旅費節約のために、経路やサイトは複数を調べて比較検討するといいですよ。
この時は、料金的・時間的・体力的(これが一番大事)にみて、⑤の仙台ルートにしました。ちなみに、その後福島県には3回行きましたが、すべて違うルートで行っています。常磐線や東武線など、東北新幹線以外のルートで列車の旅やご当地グルメを満喫しています。一度行って自信がついたので、いろいろなことにチャレンジしています!
次は宿泊先の選び方ですが、透析前日の宿は病院からできるだけ近い所にしたほうが通院が楽なのでおすすめです。
透析後の宿は、私の場合はその時の体調で決めて、当日に予約することが多いです。体調が良くなければ、無理せず動ける範囲の宿を探しますし、体調が良ければ少し遠くに行ってみます。繁忙期でなければ意外となんとかなるものです。
飛行機や透析前日の宿、レンタカーなどは安いうちに前もって予約し、透析日の宿などは臨機応変にいきましょう。もちろん、どうしても泊まりたい宿や絶対に食べたい食事があれば、確実な予約を忘れずに。
旅先の臨時透析で気を付けること
気を付けてほしいのが、臨時透析の待ち時間です。施設や状況によりますが、臨時透析では予約の前後1時間は待ち時間として見込んでおくと安心です。
私の場合、9時から臨時透析の予約を入れた病院に8時40分に到着し、実際に透析が始まったのは10時、ということもありました(看護師さんがコロナの防護服に着替える準備と、他の患者さんの容態が悪くバタバタしたためだとか)。
透析中に健康保険の確認や代金の支払いまで終えられることもありますが、透析後に総合受付ですべての事務手続きを行う場合は予想以上に長く待つこともあるので、予定は緩やかに立てておくのがおすすめです。
さて、期待して行った福島の病院だったのですが、肝心の先生がその日はお休みで、代わりの先生の回診を受けました。この時は「遠くから来てくださいましたね」と声をかけていただいて終わりましたが、時にはご当地のお土産をいただいたり、透析後自宅へお手紙が届いたりなど、心温まる思い出ができることもあります。ほんのひと時お世話になるだけの臨時透析ですが、いい出会いがあるものです。各施設で穿刺方法や止血方法がかかりつけとは違うなど、勉強になる点もありました。
さぁ、次はどこに行こう?
この福島での臨時透析の経験をきっかけに、行動範囲が広がり、昨年だけでも北は北海道から南は沖縄まで、旅行を楽しみました。
4年前は、アメリカで初の海外透析も経験し、今年は大雪警報の新潟に突撃してきました。
こんな感じの私でありますが、私の体験談を読んだ皆さんが旅をしている気分になって、「自分ならこんな旅がしてみたいな」なんて想像してもらえるきっかけとなれば嬉しいです。
海外での透析や障害者目線での交通マナーやサービスの問題なども、機会があればお話ししたいと思います。
一度きりの人生ですから、まだまだ楽しいことをしていきましょう。
臨時(旅行)透析を受けるメリット
- 自分の病院の良し悪しを他の病院と比較できる
- 自分の身体や体力の理想と限界を知るきっかけになる
- 先生を頼るだけでなく、自分で管理するきっかけになる
- 長期の旅行ができる
臨時(旅行)透析を受けるデメリット
- 医療費がかかる(1回1万円前後)
※時間はかかりますが、自治体に申請すれば還付金を受けられます
- 複数名での旅行の場合、他の人と別行動になる
旅行がテーマのおすすめ記事
研究員よっしーさんのはなし「生活の“可能性”を広げよう」では、旅行の際の透析施設の探し方や、予約の方法などを細かく紹介しています。
初めて臨時透析に挑戦される方は、こちらもご参考にしてください。
- 生活の“可能性”を広げよう 【第3話】旅に出よう
2017.6.29 文:よっしー
じんラボ所長室の連載「全国透析施設めぐりの旅」は、所長の宿野部が国内をめぐりつつ各旅先で透析を受け、観光を楽しみご当地グルメに舌鼓を打つ紀行です。
気になる旅先があれば、覗いてみてください。福島編もあります。
※訪問した当時の情報ですので、訪れる際は各クリニックにお問い合わせください。
- 全国透析施設めぐりの旅1 兵庫編
2013.4.1 - 全国透析施設めぐりの旅2 島根編
2013.6.30 - 全国透析施設めぐりの旅3 福島編
2013.9.20
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