明日へつながるチャレンジ〜あきこの体験記〜腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
【第4話】腹膜透析を行うための、日常生活での私の工夫
2018.5.28
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糖尿病からくる合併症等で視覚障害の私には、衛生管理が大切な在宅での腹膜透析を行うことは、普通に考えると難しいです。それでも訓練を経て、人の手を借りずに腹膜透析の全ての工程を行ないました。
今回は、私の視力の状態と、在宅治療における具体的な工夫などのお話です。
糖尿病からくる網膜症によって視力のほとんどを失った私にとって、腹膜透析を行うことはとても難しい決断でした。機械の操作だけではなく、最も障害になったことは「情報の障害」です。
機械操作よりも情報収集と管理が大変
機械の操作については、便利な音声機能の付いた機器や触ってわかるシールなどの工夫のおかげで、何度も練習を重ねることでできるようになりました。
しかし、どんどん入ってくる自己管理に必要な情報(食事、薬、運動、血圧等)と透析液などの備品管理に必要な情報はとても管理が難しく、大変でした。
これらの情報収集と管理を、私はiPhoneの読み上げ機能とアプリを使って行いました。
お薬管理は薬局を変えることから
お薬の管理についてはまず、従来のお薬手帳や説明書など、紙に記載されているアナログ情報のみだった薬局から、お薬情報をデジタル化してiPhoneの中の電子お薬手帳での管理も可能な薬局に変えました。
病院で発行された処方箋を事前にカメラで撮影し、その薬局に送信しておくと、お薬と一緒にお薬情報の入ったQRコードも印刷して準備しておいてくれます。あとはお薬手帳のアプリでQRコードを読み取れれば、処方の年月日、病院名、医師名、お薬の名前、飲む回数はもとより、効果や使い方、副作用、保管方法等までも細かく音声で教えてくれます。
その他の自己管理情報もiPhoneアプリを活用しています
病院で、いつ、いくらかかったかの医療費は「全国健康保険協会の情報提供サービス」を利用し、端末で確認しています。
食事に関しても、iPhoneの画像や写真から文字を認識するOCRアプリを利用し、食品のラベルで気になる原材料名、栄養成分などを音声で確認しています。
また、体温計のようなセンサーをスマートフォンのイヤホンジャックに差し込んで塩分が測定できる「salie(サリィ)」も活用しています。
運動に関しては、自分が普段どれだけ体を動かしているのかを知るために、iPhoneをできるだけ持ち歩いています。ただ持っているだけで、自動で時間ごとの歩数や距離、消費カロリー、登った階数などを計測してくれるので、毎日万歩計代わりに運動量を管理しています。
最も大切である血圧の管理は、音声血圧計で測定し、その記録をiPhoneの血圧管理アプリにデジタルデータとして記録しています。他の患者さんが使用する血圧手帳の代わりです。
多くの自信を得られた腹膜透析の経験と出会い
2017年 11月に腹膜透析から血液透析へ移行しましたが、腹膜透析での経験は私にとってすごく大きなものであり、それと同時に「頑張ればできることがいろいろあるんだ」という多くの自信にも繋がりました。
在宅で、自分で行う腹膜透析の導入を決断するまでにはとても長い時間がかかり、実際に始まるまでの間も不安や恐怖で心配な毎日でした。
視力のほとんどを失い、腎臓機能が低下し、在宅で腹膜透析を開始するまでの約5年、その間にたくさんの出会いがあったことにすごく感謝しています。
この約5年という時間と出会いが無かったら、きっと私は「透析をしてまでも生きる意味が見つからない」と考えて治療を放棄し、透析を受けなかったでしょう。
幸せなことに視覚に障害があってもできることがたくさんあって、1人で外にも行けるようにしてもらえて、再び楽しさを教えてもらってからの透析導入だったので、腹膜透析を受けることができたのだと思っています。
血液透析に変わった現在。この時の気持ちと、感謝の気持ちと、少しだけ自分の中に芽生えた自信を胸に、生かされた人生を大切に前に進んでいます。
視覚障害者でもできる在宅での腹膜透析の方法 ご紹介
あきこさんの腹膜透析の手順を記録した動画です。全30分程度で全行程をご覧いただけます。
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