明日へつながるチャレンジ〜あきこの体験記〜腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
【第3話】視覚障害者にもできる腹膜透析での工夫
2018.3.5
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糖尿病からくる合併症等で視覚障害の私には、衛生管理が大切な在宅での腹膜透析を行うことは、普通に考えると難しいです。それでも訓練を経て、人の手を借りずに腹膜透析の全ての工程を行ないました。
今回は、私の視力の状態と、在宅治療における具体的な工夫などのお話です。
私の見え方
まず中途の視覚障害である今の私の見え方と、健常者の見え方との比較です。
写真で比較すると分かりやすいと思います。手術で視力が0.01残ったといっても、目の前にあるものが何なのか、声を出さないと人か物かの区別もつきません。まぶしさの中にぼやっとしていて、はっきりとした形がありません。
さらに視野は、左の眼球の真ん中ではなく隅の方がわずかに見えるだけです。右眼はまったく見えません。
淡い色よりは、周囲の景色より色が濃くはっきりしているものの方が認識しやすく感じます。 そのため、白と黒のコントラスト比が高くなるように見え方の工夫をすると、無駄な動きからのストレスが少なくなり、生活がだいぶ楽になります。それでもわかりにくいものには凹凸のあるシールを上手に組み合わせて、手のひらや指の腹で触って区別しています。
腹膜透析を実施するための私の工夫いろいろ
腹膜透析を始めるにあたって、透析液を透析チューブに送るポンプの機械(マイホームぴこ)や透析チューブを清潔に、自動で接合する機器(むきんエース)のタッチパネル画面や操作ボタンに、視覚障害者でも分かりやすい画期的な工夫をしました。
体内に入れる透析液の液量を調節したり排出された液量を確認するために、見て確認する市販のデジタルのはかりでは分からないので、ドイツ製のクッキング音声はかり(日本語用)を使って耳で確認しています。
体内から排出された廃液は、家の洋式トイレに流して処理するのですが、ビニールの廃液袋をハサミで切ってトイレに流そうとすると、床も便器も真っ白に見えてしまって、便器の真ん中の位置が分からず、こぼしてしまうことがよくありました。
そこでフタと便座を上げた白い便器のわく部分に黒いテープで縁取りをすると、便器の位置がなんとなくドーナツ状に、ぼやっと黒く見えてくるので、直接手で便器に触れて確認しなくても、廃液をこぼす位置がわかるようになりました。
透析後の結果の確認にはiPhoneの音声機能を活用
腹膜透析後の結果はマイホームぴこ(透析機械)の液晶画面に表示され、それに接続された小型プリンターでレシートのように印刷されます。もちろんその透析結果を目では確認できないので、マイホームぴこの液晶画面または印字されたレシートをiPhoneのOCR(光学文字認識)機能のアプリで撮影し、文字情報を音に変えて耳で確認します。
自分を乗り越え、何でも自分でやりたいという気持ちが後押しに
誰かに透析のサポートをお願いすれば、手間も時間もかからず安全に行えるかもしれませんが、私には3年間消極的に引きこもっていた自分を乗り越え、何でも自分でやりたいという気持ちがありました。過去に腹膜透析を自宅で行なった前例がないと知りながらも、歩行訓練士の黒瀬先生にロービジョンケアの指導をしていただきました。
私に残された片眼のわずかな視力と視野を最大限に生かす改善と工夫で、腹膜透析への目が見えない情報障害による不安はだんだんと少なくなり、ついに、旅行先のホテルや車の中などの外出先でも1人で廃液などの処理ができるようになりました。 血液透析に移行するまでのわずか1年10ヶ月間でしたが、不衛生によるバイ菌混入の腹膜炎を1度も起こすことなく、 目が見えにくい私でもギリギリまで長く自宅で腹膜透析を行うことができました。
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