with Kidney調査
第6回 当事者アンケート⑤こころの健康について 調査結果
2024.7.10
― with Kidneyプロジェクト 開催中のアンケート ―
調査目的
慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease、以下 CKD)の治療と生活に関わるドキュメントや情報を全てマネージメントするための、カスタマイズして長期にわたって使える管理のしくみ「患者と医療者がつくった腎臓病とのつきあい方ガイド」を構築するにあたって、今現在のストレスや悩み、どんなことが不安なのか、それらにどう対処しているかなど、腎臓病と診断された皆さんのこころの健康に関してのアンケートを実施しました。
調査概要
調査方法 | Webアンケート |
---|---|
調査対象 | 腎臓病の方、透析をしている方、移植経験者など腎臓病当事者 |
調査期間 | 2023年9月1日(金)~ 9月28日(木) |
有効回答数 | 102名 |
病気とこころの健康
ストレスが病気を引き起こしたり、病気でのストレスが病状を悪化させるなど、ストレスと上手に付き合うことが療養生活の鍵を握っていることは疑いようがありません。
病気をもつ方々のストレス対処に関しては、ストレスと付き合う術を知っているか、自分の手に負えなくなったら専門家に頼ることができるか、などの当事者自身の課題と、医療者や医療施設が「体」だけではなく「こころ」も気にかけて相談環境などを整えているのか、というふたつの側面があります。
この両側面の実態を調査し、病気をもつ方がこころの健康をなるべく保ちながら生活するためのヒントを考える材料とします。
回答者の属性等
G1〜G2 | G3 | G4 (保存期腎不全) |
G5 (透析をしている) |
総計 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
女性 | 1 | 10 | 10 | 21 | 42 | |
30代 | ― | ― | ― | 2 | 2 | |
40代 | ― | 1 | 2 | 4 | 7 | |
50代 | 1 | 8 | 5 | 9 | 23 | |
60代 | ― | 1 | 3 | 6 | 10 | |
男性 | 4 | 6 | 9 | 40 | 59 | |
20代 | ― | ― | 1 | 2 | 3 | |
30代 | 2 | ― | ― | 1 | 3 | |
40代 | 1 | 1 | 4 | 7 | 13 | |
50代 | ― | 2 | 1 | 17 | 20 | |
60代 | 1 | 2 | ― | 10 | 13 | |
70代 | ― | 1 | 3 | 2 | 6 | |
総計 | 5 | 16 | 19 | 62 | 102 |
回答者の年齢とCKDステージ
回答の傾向
Q1では3割程度の方がストレスや悩みにうまく対処できていない実態が浮かび上がりました。潜在的にもっと多いかもしれません。
どんなストレスや悩みを抱えているか聞いたQ3で「ストレスや悩み、不安はない」と回答した方は102名中4名しかおらず、ストレスや悩みがない方はほぼいないと言っても良いでしょう。
しかし、医療機関の相談環境の有無を問うQ2では、通院している施設にはメンタル面を相談できる環境があるのは2割程度でした。
Q3では普段の生活が変化すること、食事制限、病気が悪化することへの恐怖などに対して半数以上の方が「はい」と回答しています。
注目すべき点は、3割程度の方が家族への負担を気にしていると回答しているにもかからず、主な相談相手を聞いたQ4では最多の4割程度の方が相談先の優先順位は身内と回答しています。負担を申し訳ないと感じながらも身内以外には相談しにくいというこの結果で、病気というものが非常に個人的なものだと再認識できました。
病気という現実を受け入れられない、自責の念がある、うつ状態になった、などの回答も少なくないことから、病気をもつ方の心のケアは非常に重要であると言えるでしょう。
Q1:腎臓病が分かってからのストレスや悩み、不安や落ち込みなどのこころの負担に対して対処できているか[n=102]
A | うまく対処している方だと思う | 17 |
B | ほどほど対処できていると思う | 54 |
C | あまりうまく対処できていない | 23 |
D | 全く対処できていない | 7 |
E | ストレスや悩み、不安を感じたことがないので対処は必要がない | 1 |
Q2:通院している施設のメンタルケアの相談環境[n=102]
A | 特に相談できる環境はない | 68 |
B | 気にしたことがないから分からない | 12 |
C | 心療内科や精神神経科の専門医がおり、診療・相談ができる | 7 |
D | 院内スタッフによる相談窓口がある | 7 |
E | 院内カウンセラーがいて相談できる体制になっている | 4 |
F | 提携しているメンタルクリニックがある | 1 |
G | その他 | 3 |
その他の回答
- 信頼できる看護師に相談している。
- 他の病院の精神科に行ってます。
- 鬱病があるので神経内科に通ってる。
Q3:腎臓病が分かってから今まで(透析をしている方は透析導入前まで)に感じてきたストレスや悩み(複数回答)[n=102:回答数=653]
A | 食事を制限せざるを得ない | 67 |
B | 治療のために生活習慣を変えざるを得ない | 63 |
C | これまで通りにできないことが増える | 61 |
D | 病状が悪化することへの恐怖 | 59 |
E | 体調不良のつらさ | 42 |
F | 家族への負担に対する申し訳ない気持ち | 38 |
G | 自分が病気であるという現実を受け入れられない | 31 |
H | 病気に関して人から傷つくことを言われたり、心無い態度をとられた | 31 |
I | 家族や友人、勤務先に病気のことをどう伝えるべきか悩んだ | 27 |
J | 金銭面で生活が苦しい | 26 |
K | うつ状態になったり、「消えてなくなりたい」と思ってしまった | 26 |
L | 通院や転職などによる環境の変化 | 25 |
M | 相談する人がいない、孤立した | 23 |
N | 意識の混乱(幻覚、物忘れがひどい、注意力の低下、興奮する、眠れないなど)が起きた | 22 |
O | 仕事や職場、職種を変えざるを得なくなった | 22 |
P | 病気になった自分を責める気持ちを抑えられない | 21 |
Q | 治療や生活改善の結果がなかなか出ない | 19 |
R | 治療にうまく取り組めていない、またはそんな気がする | 18 |
S | 病気が原因の家庭不和 | 9 |
T | 税金、ローンなどで支払いが滞納した | 8 |
U | 暴飲暴食、飲酒など誤った行動に走ってしまった | 7 |
V | ストレスや悩み、不安はない | 4 |
W | 借金せざるを得なくなった | 4 |
その他の回答
- 毎月検査しているが、この先どのように進行していくのか不安。
- 同じ腎臓病者でも個々に程度や状況が違うので、ふとした言葉にイチイチ傷つく。敏感になっている。
- 精神科と透析病棟でたらい回しにされて、なお解決しない問題がある。
- 今は車で通院してるが運転ができなくなったらと不安。
- ステロイドのせいでの睡眠障害が続くことと、新型コロナウイルス感染症と合わさり安静の指示が3年間続き、解除された後、体力、筋力がステロイド筋症の影響で中々戻らない。年齢的なものもあるかもしれないが、初めての経験で精神的にイライラすることが多くなった。
Q4:ストレスや悩み、不安を感じた場合に真っ先に相談する人[n=102]
A | 家族・配偶者またはパートナー | 36 |
B | 誰にも相談しない | 26 |
C | 友人・知人 | 12 |
D | 通院先の医療従事者 | 10 |
E | SNSなどに書き込む | 8 |
F | メンタルヘルスの専門家、専門クリニック | 4 |
G | 患者会以外で同じ病気をもつ人 | 3 |
H | 患者会 | 1 |
I | 勤務先の産業医や心理士、カウンセラーなど | 1 |
J | オンラインカウンセリング(チャット、メールなど)や電話相談サービス | 1 |
Q5:Q4で「誰にも相談しない」と答えた理由[n=26]
A | 話しても分かってもらえないだろうから | 7 |
B | 口にすると余計につらくなるから | 4 |
C | 話を聞いてもらっても何も解決しないと思うから | 4 |
D | 誰かに相談する以外の自分なりのストレス解消法があるから | 4 |
E | 悩みやストレスがありすぎて何から話せばいいのか分からないから | 3 |
F | 愚痴を他人に話すことに抵抗があるから | 2 |
G | その他 | 2 |
その他の回答
- 自分で消化するしかないから。
- 相談する相手がいないから。