生き活きナビ(サポート情報)腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
理学療法士ゆうぼーの じんラボ運動療法講座【第13回】
〜脳卒中のリハビリ ③〜
2015.6.11
緑の文字の用語をクリックすると用語解説ページに移動するよ。
じんラボ をフォローして最新情報をチェック!
前回の運動療法講座第11回〜脳卒中のリハビリ②〜に引き続き今回も脳卒中のリハビリについてお話しします。
脳卒中の後遺症として麻痺が残ると、肩関節亜脱臼という状態になるケースが多くみられます。
そこで今回の脳卒中リハビリ③では、肩関節亜脱臼のリハビリを取り上げます。
亜脱臼とは骨が解剖学的に正常な位置にないことにより、関節が形成されづらいあるいは形成されない状態のことです。
関節とは
骨と骨の連結部分を指します。
例えば肩関節とは上腕骨と肩甲骨によって構成される肩甲上腕関節をいいます。
亜脱臼とは
骨と骨の連結が正常にかみ合わず、骨と骨の関節面が外れかかっている状態を指します。また骨と骨がぶつかってしまっている状態になる場合もあります。
ちなみに脱臼は骨と骨の関節面が完全に外れてしまった状態をいいます。
なぜ脳卒中になると肩関節が亜脱臼するのか
脳卒中の麻痺の中でも弛緩性麻痺(しかんせいまひ)という筋肉の緊張のないダラリと腕がぶら下がっているような状態になると、亜脱臼を起こす危険性が高まります。
本来、肩関節は筋肉で覆うように保護されています。この肩関節の周囲にある筋肉(三角筋や棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)など)が麻痺してしまうことにより、関節が外れやすい状態になります。
こうした状態になると、腕がダラリと重力に従って垂れるようになります。垂れた状態になると肩関節が引っ張られてしまうので亜脱臼が起こります。
また肩関節亜脱臼は脳卒中後に限定された症状ではありません。加齢による退行変性においても起こることがあります。筋肉が弱小化することで肩甲骨や脊椎などが解剖学的に正常な位置を保つことができなくなってしまい、関節周囲の筋肉や靭帯まで異常が起こり亜脱臼となることもあります。
なぜ亜脱臼すると痛みが発生するのか
痛みが発生する理由はいくつか挙げられます。
解剖学的な位置関係が崩れると、骨と骨がぶつかることで痛みが起こります。これは動かした際に発生することが多いので、骨の正常な位置に修復する必要があります。
また亜脱臼を起こして腕が垂れ下がっている状態になると、肩周囲の筋肉や靭帯が伸びて広がるので、引っ張られた筋肉や靭帯が痛くなることもあります。この場合はアームスリングや三角巾を使って、良肢位(日常の動作において不自由の少ない関節の角度のこと)を保持することをお薦めします。
ただしアームスリングや三角巾を使用すると、正常な位置に修復可能となり固定性は高まりますが、腕を動かすことができなくなるのでいっそう筋肉が低下することや関節が固まってしまうことが懸念されます。
亜脱臼のリハビリ
以下、肩関節亜脱臼向けの筋力強化訓練や関節可動域訓練、禁忌について説明します。
今回は運動方法ではなく理学療法としての治療方法の紹介です。
ここで取り上げた方法は個人や家族が行うものではありません。
実際に行う場合は理学療法士の指導の下行いますので、ご注意ください。
①肩関節可動域運動
赤いマルで囲まれた部分が肩甲骨と上腕骨で構成される肩関節(肩甲上腕関節)です。
脳卒中後に麻痺が生じると、この肩甲骨と上腕骨の関節面がずれることで亜脱臼になることが多いです。
ずれてしまった関節のかみ合わせを整えながら、下の写真のように多方向へ動かします。肩関節は球状の関節であるためあらゆる方向へ動かすことができます。
痛みや骨がぶつかるような感じがしたら、それ以上動かさないようにしましょう。
②ワイピング
まず、亜脱臼している側の手を健常側で抑えるようにします。次に写真のようにテーブルを拭くように肩、腕を動かします。肩の動きに注意しながら、できる限り前方に突き出します。
痛みや骨がぶつかるような感じがしたら中止し、痛みや違和感のない範囲で動かすようにしましょう。
③肩関節挙上・下制運動
これは上肢麻痺による亜脱臼が生じた場合に、弱りやすい筋肉である棘上筋や棘下筋の筋力強化訓練です。
写真では重錘(鉛の入った重り)を使用していますが、水の入ったペットボトルなどを持ち、写真のように肩を上下に10〜20回程度動かします。
④禁忌について
これは避けた方が良い運動方向です。
ボールを投げるような動きは肩関節の構造上において、この方向は脱臼リスクが高くなります。よって脱臼方向への動きには注意が必要です。
肩関節の構造を理解した上で正しい運動を行い、亜脱臼から脱臼への進行防止・関節拘縮(かんせつこうしゅく:関節の動きが制限された状態)の予防を図りましょう。
この記事はどうでしたか?
生き活きナビ内検索
- 腎臓病全般
- ご家族の方