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透析予防の腎臓内科医の記録【後編】
〜最先端に迫る! 腎臓の運動療法、腎臓リハビリテーションについて
2020.3.9
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前編では、何かと気をつけることが多い腎臓の食事療法についてお話をしました。後編は腎臓病の方向けの運動療法「腎臓リハビリテーション」についてです。
腎臓病の患者さんが運動した方が良いって本当?
ほんの10年くらい前までは私達医師の間でも「腎臓病の患者さんは運動をしてはいけない」と考えられていました。しかしここ10年でさまざまな新発見があり「運動をした方が良い」と考えられるようになりました。
結果、腎臓リハビリテーション学会が設立され「腎臓リハビリテーションガイドライン」という医療の世界の教科書みたいなものも発行されています。
腎臓リハビリテーションの効果
腎臓リハビリテーションの効果は主に2つあります。
1:身体機能の保持
腎臓病の患者さんは身体機能が低下しやすいと考えられており、健常人に比べて身体機能が7割低下するという報告もあります。
尿毒素によって筋肉が衰えやすくなっている、過度な食事制限で必要な栄養素が摂れていない、ホルモンの異常があり骨が脆くなっているなど、さまざまなメカニズムが関与していると考えられています。
腎臓病の患者さんの高齢化により、フレイル(虚弱)やサルコペニア(加齢による筋肉量の減少)と呼ばれる、身体機能の低下に伴う寝たきりのような状態になることが問題視されています。
そのため、腎臓リハビリテーションを行い身体機能を保つ必要があります。
2:腎保護
身体機能の保持に加えて、腎臓リハビリテーションには腎臓を守る効果が期待されています。
メカニズムはまだ分かっていない部分も多いですが、腎臓の血流を調整する際の酸化ストレス(細胞を傷つける物質が溜まった状態)が有酸素運動により減量して、腎臓の血流を増やして腎臓を守る作用が発生したり、運動による筋肉の増加が腎臓を守る可能性が報告されています。
まだ歴史が浅く、今後の研究結果次第ではありますが、腎臓リハビリテーションの腎臓を守る作用には大きな期待が集まっています。
腎臓リハビリテーションの注意点
腎臓リハビリテーションを行う際は、心臓や血管に異常がないか、糖尿病の合併症がないかなどを評価します。
これらの評価でリスクがメリットを上回る場合は、腎臓リハビリテーションを行わないこともあります。
また腎臓リハビリテーションを開始して、胸が痛い、ふらつき、血圧が下がる、動悸がするなどの症状があれば、適宜中止することもあります。
腎臓リハビリテーションの実際
腎臓リハビリテーションは、有酸素運動と筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行うレジスタンス運動の組み合わせで行います。
有酸素運動は週3〜5日の頻度で、少し息が上がり心地良い程度の負荷でジョギングなどを行います。
レジスタンス運動は週2〜3回の頻度で行います。自分の体重を使ったスクワットのような運動や、ゴムチューブなどを使った運動をします。
大体1セットで10回くらい行える程度の負荷をかけて、1日1〜3セットくらい行うと良いです。
リハビリテーションと言うと、クリニックなどの医療機関で行うイメージがあると思いますが、腎臓リハビリテーションは自宅にてご自身でやっていただく割合が多いです。
腎臓リハビリテーションの保険適応
実は、腎臓リハビリテーションの保険適応は非常に限定的で、あまり行われている施設がありません。そのため、主治医と確認を取りながら、ご自身でプログラムを決めて自宅にてコツコツやっていくのが良いでしょう。
この記事の筆者は、この腎臓リハビリテーションをもっと世の中に広めるために「クラウドファンディング」を行っております。もしご興味があれば一読ください(外部サイトに移動します)。
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