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【第5回】目に頼らない透析の自己管理について その1
2021.10.18
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今回は、いよいよ「目に頼らない透析の自己管理」についてです。今回は透析への通院、体重や血圧の測定、検査データの確認方法についてお話しします。
透析に通う
まず、標準的な血液透析を行うとして週3回の通院手段を考えなくてはいけません。
まだ視力が残っていて、自力通院が可能な方は特に大きな問題ではありませんが、一人で通院するのが難しい人は送迎のある病院を選ぶのが無難でしょう。
しかし、自宅が送迎サービスの範囲外だったり、何らかの事情で送迎のある病院にかかれなかったりした場合は、どうしたら良いのでしょうか?
週3回家族に送迎してもらうのは、家族に負担をかけてしまうかもしれませんね。それに、そもそも一人暮らしの方は送迎を頼む家族がいません。
そんな時には、同行援護や通院介助などのサービスを使って通うことが現実的かもしれませんが、自治体によって利用上限があったり、週3回コンスタントに来てくれるヘルパーを探すのは結構大変なので、高齢者のための居宅介護支援事業所ではなく、ガイドヘルパー(移動介護従事者)サービス専門の事業所などにお願いすると良いと思います。
とはいっても、同行援護の介護報酬はあまり高くないため居宅介護の片手間で営んでいるところが多く、同行援護を専門的に大規模に行っている事業所は外出需要の高い都市部に限られています。しかし、そのような事業所にはガイドヘルパーが100人以上在籍している上にカバーする地域が広いので、近所に大きな事業所がなかったとしても、近隣の大きな都市の事業所が対応してくれるケースもあります。
また、そのような大きな事業所では、いつものヘルパーの都合がつかなくなった場合などには代わりのヘルパーを用意してくれるなど、小さい居宅介護支援事業所よりは支援体制が充実しています。
体重や血圧を測る
次は、体重や血圧の測定についてです。
腎臓病患者なら自宅で定期的に測る必要がありますね。もちろん体重計や血圧計の数字がちゃんと読めれば特に問題はありませんが、目が悪くなってきて文字が読みにくくなると大変です。
そんな視覚障害者の健康管理支援機器として、音声体重計や音声血圧計、そして音声体温計があります。使い方は一般的なものと同じですが、測定結果を音声でしゃべってくれるのです。
ん? 体重をしゃべられたら恥ずかしいですか? 弱視の方で、まだある程度見えてる方は、自分の体重や血圧を大きな音で知らせる機械に抵抗を感じる方がいるかもしれませんね。
そのような方のニーズに応える形で、イヤホンを接続できるものもありますのでご安心ください。なお、“しゃべる家電”も自治体によっては助成対象となっています。
検査データを確認する
透析をしていると、血液検査や胸部X線などさまざまな検査を定期的に行いますね。もちろん何か異常があれば、医師や看護師からなんらかの情報提供はありますが、やはり普段の自分の体の状態などは、ある程度は自分で知っておきたいものでしょう。
私は最初、血液検査の結果は病院で看護師さんに直接読んでもらってました。でも、読んでもらった値をいつまでもずっと覚えていられるわけではありませんし、看護師さんも忙しくてなかなか引き留めにくい状況の時もあります。
次の手段として自宅で家族に読んでもらいましたが、それでも同じことです。
そこで文明の利器の登場です。
全盲の視覚障害者が印刷物を読むときの3大機器「スキャナー・OCRソフト(画像から文字を読み取るソフト)」「パソコン」「スクリーンリーダー」を使うことにしました。印刷物を読ませる手順は「【第3回】情報の獲得」で話したとおりです。
もちろん、機械のすることですから文字化けしたり漢字を正しく読んでくれないことなどは多々あります。そういう時は前後の文脈から推測して読み進むしかないので、ちょっと大変です。
しかし、一度スキャンしてしまえば、電子データとして保存できるので、確認したい時にいつでも検査結果を確認できるというメリットがあります。
目が悪くなってくると、自分のことも自分で確認するのが難しいので、多少の文字化けくらいはしょうがないかなあと割り切れるようになってきましたが、やはり不便でしたし、故障したのをきっかけに今年の8月に高性能の新しいスキャナーを買いました。
私はパソコンとスキャナーを活用していますが、パソコンが苦手な方、持っていない方もいることでしょう。そんな方は、スマートフォンで使える文字拡大アプリやOCRアプリ、複雑な操作がいらない簡単な読み上げ機器や文字拡大機器(拡大読書器)なども活用する手もあります。
視覚障害者と言っても一括りにはできず、状況や環境は一人ひとり違いますので、文字処理方法のさまざまな選択枝の中から自分が使いやすいものを選ぶと良いでしょう。
次回は、食事や薬の管理などについてお話しします。
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