透析になって改めて知った食事の大切さ腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
【第5回・最終回】透析4年目、これからの私のやりたいこと
2024.10.15
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今の自分に出来ることを考える
透析を始めた頃は、私より1時間長い4時間透析の母を待ってから家に帰ると午後3時過ぎで、食事後には動けなくなってしまうこともあり、どうしても生活が透析中心になりがちでした。透析4年目を迎えた今は食事療法も功を奏しているようで、疲れやすさはあるもののたまに筋トレに行ったりしていることもあり、透析に入る前と同じくらいまで動けるようになっています。
いざ動けるようになって周りを見ると、仕事をしている友達とはなかなか予定が合わず、透析によって行動が制限されていることを実感するようになりました。頭では理解して納得していたつもりだったけど、「いいな。健康で仕事ができている人は。私だって好きで透析になったわけじゃないのに」と、曜日や時間に縛られることが段々と嫌になってきました。健康でいる人を羨ましく思う気持ちが辛くて、泣いたこともあります。
そんな時、何気なく透析患者の平均余命を調べてみました。年々伸びているとは思いますが、その時の自分の年齢での余命は約20年位と知りました。そのうち思うように動けるのは何年程だろうと考えたら「人と比べて羨ましがっていても何にもならないし、今は仕事をしていない分自由な時間がたくさんある。興味のあること、やりたいことを躊躇しないでやっていこう」と思いました。透析は終点ではなくて新たな生活に進む手段で“透析が仕事で、その合間に生活する”という考えから“充実した生活を送るために透析をする”と、透析に重きを置きつつも自分らしく生活することに気持ちを切り替えることにしました。
やはり食事に関することをやりたいと思い、食生活改善推進員(以下食推)の勉強をして、人生の先輩方とボランティア活動を始めてみました。食推は栄養士と似ていて、日々を健康に過ごせるように食を通してお手伝いする活動です。異なる点はボランティアであることと、直接の栄養指導は行わない(市の管理栄養士さんが担当する)という点でしょうか。食推の活動は色々な方との出会いがあり、人としての学びもたくさんあります。厳しい方もいるので、前の職場や周りの人にどれだけ恵まれていたか実感することもあります。学生のように一緒に勉強するつもりでいるので楽しいです。
目標を見つけて前に進む
栄養士の資格を使って人のために仕事をすることは、年齢や体力、キャリア的にも難しいので諦めました。ただ、透析患者として食事は一生ついて来ますから、栄養士会に入って最新の情報を学び、得た知識はまずは自分のために使おうと思っています。勉強したことを自分の身体で試すぶんにはそんなに影響がでませんからね(笑)。腎臓病に関することに的を絞って勉強できるので、私には良いかもしれません。そして「病気になったからこそ食事の大切さを伝えることが出来るのかな?」とも感じていて、この体験談のように、栄養士と透析患者両方の視点で誰かに話をする機会が今後もあるのかもしれません。
私は透析をしていることを周りの人に隠してはいませんが、理解が得られないこともあったり、やりたいことを諦め続けるのも嫌なので「移植」の登録もしています。
待機時間が12~15年と長いので、貰えないままかもしれませんが、並ばなければ順番は来ません。透析から解放されたら、もう少し社会貢献できたらと思っています。
今度は旅行を楽しみたいと、旅行透析について病院のスタッフに色々と尋ねています。事前の準備が必要なのでハードルが高そうですが、チャレンジしたいと思っています。
そして最近は仕事の再開に向けて透析日の調整を病院にお願いしています。地方は都会と比べると夜間透析やオーバーナイト等働きながら血液透析をする選択肢が少ないので、もどかしさを感じる日々ですが、今は仕方ないかなと思っています。
おわりに
移植や仕事のための体調管理や、旅行を楽しむために、食事の大切さを理解してしっかりと栄養を摂り、しっかりと透析をして少しでも長く自分らしく生活してゆけるようにしたいと日々思っています。
今そう思えるのも、昨年の5月に天寿を全うした、透析の先輩でもあった母の存在が大きいです。晩年、これからはゆっくり余生を送れると思った矢先に透析になり、たまに愚痴をこぼしていたけれど、現実を受け入れてニコニコしながら生活していた姿には頭が下がります。
以上が、栄養士として学んだ私が腎炎から透析になり、試行錯誤しながらも食事の大切さを理解して、今の気持ちに至るまでのお話でした。私のこの生活は、先生、看護師さん、臨床工学技士さんや友達など多くの人が関わって成り立っています。皆さんのおかげで私は生きて生活できているのだから、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。そしてこの感謝の気持ちを少しでも他の人にも返せるようにこれからも努力してゆきたいと思っています。
― おわり ―
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