透析になって改めて知った食事の大切さ腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
【第4話】透析になってからの私
2024.8.5
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母と二人で、今度こそは頑張る
作製した腕のシャントが無事に育ち、腕に穿刺できるようになったので、首のカテーテルを抜いて退院することができました。しばらくしてから会社に顔を出し、これからのことを相談しました。入院生活で体力が落ちてしまったので、座って仕事ができる部署に異動をお願いしていたのですが「ここで無理してまた体調を悪くしても嫌だな」と思い、長年勤めた職場を辞めて透析治療に専念することにしました。
当初は、透析日にはだるさで食事が思うように食べられず痩せてしまったり、透析後に起き上がって帰ろうとすると血圧が下がり、意識が飛んで倒れたりと不調が続き、食事を考えている余裕が全くありませんでした。少しでも身体を休めたかったので、簡単に済ませられる冷凍食品や市販の総菜品を中心に食べていました。
透析を始めて1年ほどが過ぎた頃から少しずつ体調が落ち着いてきて、再び食事に向き合えるようになってきました。母が病院からもらってきていたリンやカリウムについての冊子を引っ張り出してきて、二人で一緒に読みながら確認してみるなど、母とお互いに食事を意識するようになりました。それまでは私一人が頑張っている感じで大変でしたが、「二人で食事を気にかけていれば何とかなるのかもしれない」とほっとした気持ちでした。母が透析になった時に食事について考え直すチャンスもあったのに、と反省したと同時に、今度こそは頑張るんだという気持ちにもなりました。
ある日病院で、看護師さんにリンの検査値を注意されていた年配の患者さんが、「死んでもいいから好きなものを食べるんだ」と話しているのが聞こえてきました。
「えっ! この人何言ってるの? 食事制限って必須でしょ!」と驚きましたが、食事制限がなぜ必要なのかを詳しく知っていた私や、私から伝えられていた母と、この患者さんとは状況が違うはずです。検査値の高さ・低さだけではなく、その意味もきちんと伝えてあげたらいいのに…と心の中で思いながら聞いていました。自分は栄養の勉強をしていてよかったと思いましたが、その人に教えてあげられないもどかしさも少し感じました。
食事療法の努力は報われる
食事療法は、やれば結果が出ます。たんぱく質が入っているお肉やご飯の量をきちんと量ればリンの値が下がるし、塩分を控えれば喉の乾きも少なくなり水を飲む量も減りました。そうすれば除水量も少なく、私にとって懸念だった透析後の血圧低下による失神もなくなりました。看護師さんに「いつも高めのリンが低くなったけどどうしたの?」と聞かれたので「ご飯も主菜も分量をきちんと量ってみました」と答えたら不思議な顔をされました。本来ならば当たり前の事が、なかなか出来なかったんですよね。仕事なら出来ていたことも、自分のこととなると365日毎日3食分量を量って作るのは大変に感じました。
私は、買い物から帰ったら直ぐに魚や肉は60g~80g程度の小分けにします。食べきれない場合は味付けして冷凍しておきます。そうすればその都度量る手間もなく、レンジでパパっと調理できるのでだいぶ楽になります。野菜も先に湯でこぼしておくので、買い物の後はやることが多くて大変ですが、調理する時に時短になって意外と便利です。やれば検査結果に表れるので、頑張ってみるかという気持ちになっています。
きちんとやる一方で、気楽に考える
ただ時折「この卵と納豆ってたんぱく質かぶりだったな」などと考えながら食事をしているとふと、面倒だな…と嫌になる時があります。そんな時は好きなチョコレートをちょびっと食べて気を紛らわします。チョコレートはリンもカリウムも多めなので「ちょびっと」がみそです(笑)。がんばり過ぎないで、時には気分転換も必要だと思います。
時々お友達と外食もします。私の食事は制限が厳しくて食べる物が合わないから、一緒に行っても楽しくないかも…と思うこともありましたが、思い切って行くようにしています。「外食以外の残りの2食で調整する」「なるべく定食ものを注文する」ことに気をつけて、量が多い時はもったいないけど残してみたり、汁物は具材だけ食べてみたりして工夫すれば、十分食事を楽しめます。最初は、あれはリンが多い、これはカリウムが多いからダメ…と食べられるものが無いように思えましたが、工夫次第で何とかなると考えられるようになりました。
この「リンやカリウムを意識すると食べる物が無いんじゃないか?」とか「たんぱく質は摂らなきゃいけないけど制限もあるからどうしていいか分からない」とか「何にリンが含まれているか知らない」という矛盾や疑問は「透析患者あるある」のようで、他の患者さんともその話をしています。自分で食事療法をやっていても、自己流になって心配になったり不安になったら病院の管理栄養士さんに聞いてみるのも良いと私は思います。ちゃんと勉強してきているプロがいるんですから、的確なアドバイスをもらえると思います。私は一緒に勉強する感じで疑問点をぶつけるので、やりにくい患者かもしれません(笑)。
そんな風にきちんとやる一方で、気楽に考えるようにもしているので、思ったよりも長続きしているんだと思います。
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