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腎臓病・透析をしている方にも知っていただきたい ~視覚障害者の外出先でのトイレ問題
2023.3.27
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これからどんどん暖かくなりそして暑くなっていくにつれて、腎臓病の方は水分制限に関する悩みが増すことと思います。暑い季節は視覚障害者にとっても水分補給とトイレに関する深刻な問題があります。「なぜトイレ?」と不思議に思われた方、ぜひ読み進めてください。
腎臓病の方は腎性網膜症や糖尿病性網膜症などによって視力が低下する人が少なくありません。
今回のミーナさんの記事は、視覚障害のある人がどのようなトイレの問題に陥りやすいのか、そんなトラブルを回避するアイディア、病気と向き合って生きていく心構えなどもたくさんお話しいただいています。視覚障害の有無に関わらず読んでいただけると嬉しいです。
(じんラボスタッフ)
視覚障害者は熱中症になりやすい 〜深刻なトイレ問題〜
私の知り合いに、「加齢黄斑変性」という目の病気にかかり、視力が低下してしまった女性がいます。
目が悪くなる前の彼女は買い物やドライブなど外に出ることが好きで、家族や友人たちと様々な場所に遊びに行っていましたが、視力が低下し外に出る自信がなくなってしまいました。
このような体験は年代や眼病の種類に問わずよくあるお話なのですが、彼女にはもう一つ人にはなかなか言いづらい悩みも抱えていました。それは、トイレに関する問題です。
目が悪くなると、外出先でトイレを探すのが難しくなりますし、またトイレにたどり着いても施設ごとにトイレの構造はもちろんバラバラなので、外で用を足すのが憂鬱になってしまう人は多いのです。
彼女も同様に外出先での用足しが億劫になってしまいました。また、トイレのことなどなんとなく恥ずかしくて人に相談しづらいということもあり、外出自体も億劫になってしまったのです。
とはいえ日常の買い物などもあるので、まったく外出しないわけにはいきません。そこで彼女は、出先でトイレに行きたくならないようにと、外出する日は朝から水分を取らないことにしたのです。
しかしある夏の暑い日、その行動が裏目に出ました。
彼女は車の運転免許証を返納しているので、朝から水分を取らずに炎天下を歩いてスーパーに向かいました。スーパーに着く頃にはぐったりして、体がだるくなってしまったのです。
ひとまずスーパーのベンチに腰を下ろしたものの、体が言うことを聞かずうまく立ち上がれません。心配した店員さんが「大丈夫ですか?」と声をかけてくれましたが、頭がぼーっとしてしまい、うまく答えられなかったとのことです。
そのまま救急車を呼ばれて病院に搬送され、熱中症と診断されました。その後、病院で点滴をしてもらい、お連れ合いに迎えに来てもらって何とか家に帰ったそうです。
視力が低下した人の外出先でのトイレ対策
視覚障害者の外出先でのトイレ問題は、全盲弱視問わずどこへ行ってもついて回ります。
彼女のように出かけるときは水を飲まないようにするという人もそれなりにはいるのですが、昨今の殺人的な夏の猛暑ではすぐ熱中症になってしまいますし、脱水は腎臓に悪影響なうえシャントの閉塞につながるので、腎臓の機能が低下している人は無謀なやり方でトイレを我慢するのは危険です。
それでは、視力が定価した人の外出先でのトイレ対策はどうしたらよいのでしょうか。
①トイレは行けるときに行っちゃう作戦
尿意や便意の有無とは関係なく、トイレは“行けるときに行っちゃう”のが一番よい方法だと思います。「行けるとき」というのは、まず家を出る前、そして途中で立ち寄る施設、目的地についたときなど。帰り道では、目的地を出る前と途中で立ち寄る施設などが挙げられるでしょう。また外で食事をするときは、食後に行くのもお忘れなく。
このようにタイミングを押さえておけば、外出中に尿意や便意を感じるような機会はそうそうありませんし、トイレ探しで慌てたり、トイレの構造を確認するのにモタモタしているうちに間に合わなくなるーというようなことはなくなります。
②おむつ・尿漏れパットを使う
この方法は特に若い方には抵抗があるでしょうから無理におすすめはしませんが、高齢の視覚障害者や、心臓病や保存期の腎臓病のため普段からトイレが近い人の中には、おむつや尿漏れパッドを活用している人がたまにいます。
もちろん、おむつにしろ尿漏れパットにしろ、そのままにしておけば臭いが気になってしまうので、尿意や便意を感じたらちゃんとトイレを探して用を足し、替えも何枚か持っていきましょう。
おむつや尿漏れパットなどに直接用を足すのに抵抗がある人は多いと思いますが、この手段を心得ておくとトイレ探しに神経をすり減らすことが少なくなりますし、トイレの構造もゆっくり確認できるなどの安心感を得られると思います。人前での失禁という恥ずかしさからも解放されるでしょう。
余談:ミーナが公衆トイレでやってしまった失敗
私、ミーナも外出時の一番の悩みはトイレ問題でした。
トイレの場所が見つけられず我慢していたら膀胱炎になってしまった経験もありますが、透析を受けるようになると尿量が減ってきたため外出時にあまりトイレに行きたいと思わなくなり、図らずもトイレ問題が解決してしまいました。
保存期の方や腎臓を移植された方で目が悪くなってきている方は、残りの腎臓を大切にするためにも、水分摂取とトイレのことはよく考えておいた方がよいと思います。
トイレにまつわる話のついでに、私が公衆トイレでやらかした体験をお話しましょう。
私は中学生くらいから徐々に視力が落ちてきて、公衆トイレのウォシュレットや「流す」ボタンを探すのが難しくなってきました。ある地元の駅のトイレを利用した時、「流す」ボタンと間違えて呼び出しボタンを押してしまったことがあります。
「あれ? なんで流れないんだろう?」と焦っているうちにトイレの扉が開いて、駅員さんが「大丈夫ですか!」と言って入ってきたのです。
私はびっくりしたと同時にめちゃくちゃ恥ずかしかったです。下半身丸出しの姿を駅員さんに見られてしまったのですから…。
それ以来、公衆トイレを使うことに緊張を覚えるようになってしまいました(特にボタンを押すのが)。そのため「流す」ボタンを自分で探せなかったときは、あえて大小便を流さずにトイレを出てしまったこともあります。それも十分恥ずかしいことですが、知らない大人に自分の下半身を見られるよりはマシだと思ってしまったのです。
それから数年後、私の視力はさらに落ちてきてしまい、「流す」の文字も読めなくなっていました。しかしボタンに刻まれた点字を触って「流す」ボタンを確実に探せるようになっていたので、このような恥ずかしい思いをすることは少なくなっていました。
しかし次なるトラブルでは、地元駅の改修工事に伴う男女トイレの左右入れ替わりに気付けなかった私は、間違えて男子トイレに入ってしまったのです。杖を突きながら壁沿いを歩くと、何かの構造物にぶつかりました。手を前に出して形を確かめてみると、それはなんと男子用の小便器だったのです!
慌てて外に出ましたが、小便器を手でべたべたと触ってしまったのが本当に嫌で嫌で、女子トイレにかけこんでまずは手をゴシゴシと洗いました(笑)。
女性が間違えて男子トイレに入ってしまった場合はそれほど大問題にはならないかもしれませんが、逆だと通報されてしまうかもしれません。
もちろん、杖をついている男性であれば「目が悪くて間違えて入ってしまったんだな」と理解してもらえるかもしれませんが、弱視の方で「まだ見えてるから大丈夫」と杖を持たずに出歩いている人が誤って女子トイレや女子更衣室に入ってしまったら、間違いなく誤解されます。
そうした意味では、一定以上目が悪くなってきたら目が悪いということを周りの人にわかってもらうためにも外出の際は白杖を持った方が良いと思います。
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