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理学療法士ゆうぼーの じんラボ運動療法講座【第18回】
「シャント」の運動療法
2017.5.1
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今回は透析治療において生命ともいえる「シャント」の運動療法について説明します。 シャントの種類はいくつかありますが、自己動静脈内シャント(arteriovenous fistula:AVF)に効果のある運動療法となります。
自己動静脈内シャントは、血液透析治療を行う上で十分な血流量を確保するために作るバスキュラーアクセスです。また、穿刺をする範囲を広げるために動脈と静脈を吻合するという目的もあります。この吻合部のあたりが狭くなったり、詰まったりしてしまうとシャントの使用に問題が生じるため、狭窄が起きないようにしなくてはなりません。
シャント管理のポイント
①シャントの圧迫を避ける
シャントが圧迫されると静脈壁が肥厚しやすくなり、狭窄や閉塞が発生するリスクが高まるため、シャント保護のためには以下ようなことに十分注意しましょう。
- シャント側の腕を下にして寝ないようにする
- 肘関節を長時間曲げたままにしない
- 日常生活上でシャントに圧力がかかるような活動は避ける
②ドライウェイトのコントロールに注意する
透析間の体重の増え幅が大きいと、透析で除去すべき水分量も多くなります。多くの水分を除去すると血液濃度が濃縮されます。濃度が上がるとシャントの狭窄・閉塞の原因になるため、適正体重を守るように努めることが大切です。
③栄養管理
血液の粘度が高くなると血流が悪くなりシャントへ悪影響を及ぼします。シャントを長持ちさせるためには、蛋白質や血糖値コントロールの管理することが重要です。
④血圧管理
透析日・非透析日による違いや体重の増減、運動の有無、薬剤による影響、入浴、睡眠等のさまざまな要因によって血圧は変動します。血圧の変動は心臓への負担や自律神経への影響だけでなく、シャントに支障をきたす場合もあるため、血圧のコントロールが必要です。
⑤衛生管理
感染症を予防するため、穿刺部周囲の皮膚の状態を良好に保ち、清潔に保ちましょう。
⑥シャント肢の運動をする
運動することにより血管内の血流量や血管壁にかかる圧力を増やして、シャント血管の発達を促しましょう。
シャントの運動療法
シャントを鍛える方法としては、シャント側の手を掌握(握ったり・開いたり)する運動をしてシャント血管の発達を促します。
運動で筋肉を使用するためには多くの酸素を必要とします。よって、血液にのって酸素を多く運搬するために血管が太くなります。
長い期間透析治療を行っていると、血栓ができたり、除去しきれなかった老廃物が蓄積すること等により血管の内側が狭くなってしまったり、重篤化すると詰まってしまうこともあります。
こうしたことを避けるためにシャント側の運動をして、太くて詰まりづらい健康な血管にしておく必要があります。
掌握運動には、以下の写真のようなグリップハンドやゴムボール、デジフレックスを用いて行うと、さらに効果的です。
近年、血管の発達によりシャント血流量が改善されたという報告が、日本透析医学会や日本腎臓リハビリテーション学会でも挙がっています。他にも、Kt/Vや動脈硬化症も改善されたという症例報告もあります。 安全性に配慮した適度な運動は、身体機能だけでなく透析効率にも良い影響を及ぼすといわれていますので、自分に合った運動を継続できるように心掛けましょう。
参考
- 上月正博編著『腎臓リハビリテーション』医歯薬出版株式会社 (2012/6)
- 大坪みはる編著『新人スタッフのための透析講座Q&A110』メディカ出版 (2015/6)
- 小澤 潔 著・萩原千鶴子編集『はじめての透析看護: カラービジュアルで見てわかる! 」メディカ出版 (2013/4/29)
- 第7回 日本腎臓リハビリテーション学会学術集会 抄録集 (2017)
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