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理学療法士ゆうぼーの じんラボ運動療法講座【第16回】
透析アミロイドーシスによる合併症
2015.11.19
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透析患者さんに発症する「透析アミロイドーシス」という合併症を聞いたことがありますか? この合併症はアミロイドという物質が原因となり、身体にさまざまな悪影響を及ぼします。今回は透析アミロイドーシスによってどのような症状が現れるのか、またその予防方法、リハビリのための器具について説明します。
アミロイド、アミロイドーシスとは
腎不全により身体の毒素が排泄できなくなってくると、β2-ミクログロブリン(ベータツーミクログロブリン、以下β2-MG)をはじめとした蛋白質が血液中に溜まってしまいます。β2-MGは水に溶けず、また酸やアルカリにも溶解されずにアミロイドという物質となって骨や関節、全身の臓器に沈着し、さまざまな機能障害を発症させます。このアミロイドが骨や関節などに蓄積した状態をアミロイドーシスといいます。アミロイドーシスは長い間透析を受けている方に起こりやすくなります。
アミロイドーシスによる症状
アミロイドーシスの症状には、下記のようなものがあり、他に全身の臓器や動脈への沈着などの症状が現れます。
①関節の痛み
②手根管症候群
③弾発指(だんばつし)
④破壊性脊椎症
①関節の痛み
アミロイドーシスによりアミロイドが関節(肩関節や股関節、膝関節)に沈着すると、沈着したアミロイドと骨がぶつかることから痛みが起こります。本来、解剖学的には存在しない異物(アミロイド)があることで関節の動きが悪くなることもあります。さらに動かさずにいると関節自体が固まってしまうこともあるので、適度に動かすことが必要です。
②手根管症候群
第7回の講座でも取り上げましたが、透析歴が長くなると透析アミロイドーシスの症状として手根管症候群も多く現れることがあります。
手首にある手根管という正中神経が通るトンネルの中にアミロイドが沈着し正中神経を圧迫すると、親指(母指)・人差し指(示指)・中指にシビレの症状が現れます。このシビレは早朝や夜間、温度変化があるときにひどくなる傾向があります。さらに進行すると運動神経にまで障害がおよび、母指球筋の萎縮(縮こまって小さくなること)が起こることもあり、母指球筋が萎縮すると麻痺のような症状が現れ力が入りづらくなります。
下の写真は手根管症候群が発症した実例です。
丸印で囲まれた部分の母指球がゲッソリと萎縮しているのが分かります。親指に力が入らないため、ペンやコップなどを持つ、掴む、握るといったことができなくなり、日常生活に支障をきたします。
③弾発指(だんばつし)
弾発指は「ばね指」とも言いますが、手根管の中には正中神経だけでなく橈側手根屈筋腱(とうそくしゅこんくっきんけん:前腕に位置する筋肉の腱)・長母指屈筋腱(ちょうぼしくっきんけん:親指を曲げる時に使う筋肉の腱)・浅指屈筋腱(せんしくっきんけん)・深指屈筋腱(しんしくっきんけん)といった筋肉の腱(けん:筋肉を骨に結びつける組織)も通っています。
(※「浅指屈筋腱」「深指屈筋腱」どちらも人差し指から小指までを曲げるための筋肉の腱)
これらの腱を靱帯性腱鞘(じんたいせいけんしょう)が覆うように保護しています。アミロイド―シスになるとこの腱鞘にもアミロイドが沈着しやすく、アミロイドが沈着すると腱の動きが悪くなり、指そのものの動きも悪くなってしまいます。さらに進行すると下の写真のように曲がったまま変形してしまうこともあります。これも透析歴が長期化している方に多く現れます。
④破壊性脊椎症
破壊性脊椎症は、脊椎にアミロイドが沈着することで炎症を起こし、脊椎の骨や軟骨が破壊されます。症状としては四肢の痛みや筋力低下などが現れます。またアミロイドが神経を圧迫するようなことがあれば、麻痺やシビレなどの神経症状も現れます。よく起こる身体の部分としては下位頸椎(かいけいつい:首の骨)に多くみられます。
アミロイドーシスの予防
沈着したアミロイドを除去することは困難なので、アミロイドの形成・沈着の予防として透析治療の見直し(透析膜や透析機器が効率的なアミロイド除去可能なものかの確認)が必要です。また手根管症候群をはじめとしたアミロイドーシスによる諸症状への対処が求められます。
手根管症候群や弾発指のリハビリ
手根管症候群は母指球筋を中心に筋力の萎縮が現れます。また人差し指や中指でもシビレにより、筋力が発揮しづらくなってしまい、細やかに指を動かすことが難しくなります。
そこで指の力を鍛える必要がありますが、今回はリハビリではよく用いられる「デジフレックス」(酒井医療株式会社)という器具をご紹介します。
強度が0.7〜4.1㎏までの5段階で分かれています。さらに、バネが人差し指・中指・薬指・小指ごとに分かれているので、指ごとに鍛えることができます。
上の写真のように握ります。これを20〜30回程度行います。
透析治療が長くなっている方はアミロイドーシスになっている可能性が高くなります。また関節症状をはじめとした身体の異変を感じたら、必ず医師に相談するようにしましょう。
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