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知っトク? こんな事〜患者・家族のお役立ち情報
【第15回】
夢じゃない! 自宅で透析
2016.1.18
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冬になり、お布団から出るのがつらい朝が多くなってきました。とはいえ、お布団から出て仕事に行かないと暮らしていけないのでイヤイヤながらも外に出るわけですが、ふと思う時はありませんか? 「透析に行きたくないなぁ」とか「透析施設がうちに来てくれないかなぁ」と。そうして布団の中で二度寝…。 なんて冗談めかして書いてみましたが、真面目な話として自宅でできる透析「在宅血液透析(HHD)」の話です。
患者が自宅で行う透析というと、多くの方々は腹膜透析(PD)を思い浮かべるのではないでしょうか。私も初めて資料で在宅血液透析を知った時は「自宅で? 自分でプライミングや穿刺をして透析!? 」と驚いたことをよく覚えています。しかし最近では、在宅血液透析を導入したという話を地方紙などの記事で見かけることも多くなってきました。もしかすると、自分が在宅血液透析に興味があるから目につくのかもしれませんが…。
在宅血液透析が「家庭透析」と呼ばれていた時代は、透析液も患者自身が粉の薬剤を溶かして混合するなど準備も非常に大変だったと聞いています。最近ではコンソールに自動プライミング装置が導入され、RO水装置も小型化・静音化されたモデルが出ています。 また、各メーカーが在宅血液透析のモデルルームを日本透析医学会の会場で展示するなど、注目されつつあるようです。 私自身、将来的に実家に戻る際は在宅血液透析を選択したいと思い、さまざまな資料を集めている最中です。
では、患者にとって在宅血液透析を選択するメリットにはどんなものがあるのでしょうか。 まずは、自宅で行うので通院して治療を受ける時間を家族とのだんらんや自分の勉強や趣味に回せるということです。そして、現時点(2016年1月現在)では透析の回数制限(14回/月)がないので、中2日空きをなくし患者の身体にとって一番効率の良いと言われている頻回透析が可能です。
これらのメリットを知ると「なぜ在宅血液透析は知られてないの? 」と思われたのではないでしょうか。 実は、在宅血液透析を自宅で行うには乗り越えるべきさまざまなハードルがあります。希望した患者さんすべてが乗り越えられるとは限らないのです。患者さん本人が途中で投げ出さないで、自分自身の命がかかっている治療を行うという意志が必要です。さらに3ヶ月から最長で1年間の訓練期間中に、透析のコンソールや水処理装置などの機械の操作やプライミング(透析回路の準備)を覚え、自分で自分のシャントに穿刺をするなど多くハードルを乗り越え、試験に合格しないと自宅での透析はできません。
透析中の介助をする家族に穿刺から準備、後始末までやってもらえると思っていたが、奥様から「そこまでできません! 」と拒否されてしまい訓練も中止になった、という話をこの訓練を受けていた方から聞いたこともあります。 日本透析医学会の定める在宅血液透析の施行マニュアルにも、患者以外の介助者が必要であることが明記されていますし、介助者にも患者同様にさまざまな訓練を受けることが義務付けられています。
また自宅に透析のための機械を置くということは、自宅を改装する必要性も出てきますし、そのためにはそれなりの自己資金も必要です。さらに毎回の透析後に出るゴミ(ダイアライザーなど)は血液汚染物なので、感染廃棄物扱いで管理施設に運んで処理してもらうなどの細かい問題も多いのです(地域によって廃棄の規則は異なります)。
ここまでの紹介では在宅血液透析は難しそうに思えるかもしれません。ですが私たち透析患者にとって自分らしい生活をおくるための選択肢の一つとして、チャンスがあれば導入を考えてみてもよいのではないでしょうか?
(追記) 2016年10月22日〜23日に、広島県広島市の国際会議場にて第19回在宅血液透析研究会が開催されます。興味をお持ちの方は在宅血液透析研究会のホームページに患者向けのページもありますのでご覧ください。
参考サイト
- 厚生労働省『助け合いのしるし ヘルプマーク』(2015/11 アクセス)
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