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知っトク? こんな事〜患者・家族のお役立ち情報【第3回】
長時間透析って?
2014.12.29
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長時間透析と聞いて、皆さんはどのようなことを思い浮かべますか?
日本国内における透析時間の平均はだいたい1回4〜5時間で週3回がスタンダードと言われています。それに対して「長時間透析」の定義はどうなっているかを資料で調べてみました。日本国内では、透析時間が週18時間以上(週3回透析であれば1回6時間以上、隔日透析であれば1回5時間以上)と定義されています。メリットとしては尿毒症からの不快な症状の消失または緩和、栄養状態の改善や生命予後の改善などが期待されるそうです。
「今でも透析中の拘束時間が長いのにこれ以上長くするのか! 」「そこまで透析に自分の時間を取られたくない! 」という方もいると思います。ですが考えてみると、健康な人の身体では1日24時間フルに腎臓が働き、毒素の除去、水分調整、ホルモン分泌などの仕事を行っています。しかし、私のような人工透析療法を必要とする慢性腎不全患者は1週間で168時間の活動時間中に出てくる毒素を、1回5時間、週3回の透析で除去すると仮定してもその時間はわずか15時間です。この短い時間で体内に残る毒素を完全に除去するのは難しいと言えるのではないでしょうか?
長時間透析と一口で言ってもさまざまな治療法が存在しています。代表的な例をご紹介します。
- オーバーナイト透析
- 夜間の睡眠時間を利用して1回7〜8時間の透析を行う。寝ているうちに長時間の透析を行うことができる
- 隔日透析
- 中2日空きを作らずに1日おきに透析を行うことで、常に同じ条件で透析を行うことができる
- 在宅血液透析(HDD)
- 患者の自宅に透析装置を置いて患者自身の操作で透析を行う。本人の望む時間に透析が行えるので透析時間の確保もしやすい
このように長時間透析の特徴を見てみると「そんなに良い治療法ならなぜ広がらないのか? 」と思う方もいるでしょう。私自身もこの長時間透析という考え方を初めて知った時はそう思ったものです。
長時間透析を透析施設で行う場合は、診療報酬における人工腎臓の点数が1ヶ月14回までしか請求できないといったことや、透析ベッドを効率的に運用することが難しく経営の健全化ができないなどの問題が病院側にのしかかります。さらに透析看護を行うスタッフの労働時間延長の問題もあるでしょう。十分な報酬さえあれば長時間透析を検討したいと考えている病院も多いのではないかと思います。しかし、医療介護分野の支出が国庫負担を増大させている中で、国のお財布を握る財務省やその予算を運営する厚生労働省もなかなか首を縦に振らないのが現状です。このような日本の現状のルール上では、長時間透析を望むことは医療者側にとっても患者側にとってもハードルが高いと言わざるをえません。ですが当事者団体である患者会が声を上げて、長時間透析や隔日透析の導入によるQOL向上について広く伝えていくことは大切だと思います。
なにやら否定的なニュアンスの方が大きくなってきましたが、長時間透析の優位性はさまざまな学会でも徐々に発表され注目されつつあります。2014年11月に札幌市で第10回長時間透析研究会が開催され、実は私もこっそりと参加していました。この研究会発表では、患者さんのために長時間透析に熱意を持って取り組んでおられる医療者の方々の発表と、実際に長時間透析によりQOLが向上した患者さんの発表もありました。
そして、この長時間透析を広めたいという思いはついに海を越えて、台湾での透析病院でも希望した患者さんにオーバーナイト透析を行えるように準備が行われているというニュースもあり、今後も長時間透析はますます注目されていくと思います。
参考
- 『透析ケア』(2014年第20巻11号)メディカ出版
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