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知って安心 これで分かる腹膜透析(PD)
【第3回】腹膜透析(PD)についてよくある疑問質問
2014.9.11
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本シリーズ最終回の今回は腹膜透析(PD)について、よくいただく疑問や質問をまとめてご紹介したいと思います。
腹膜透析を始める時のよくある疑問質問
Q:お腹にチューブを入れると聞きましたが、どのようなものでしょうか?
PDを始めるにあたってはお腹にチューブ(カテーテル)を埋め込む手術をします。手術時間はおおよそ1〜2時間程度です。カテーテルはやわらかいシリコン製で、お腹から出る部分の位置は体格などに合わせベルト位置からずらすなどして日常生活の邪魔にならないように決められます。
良好な状態の出口部は「おへそ」のような状態です。感染を予防するために病院で教えられた方法に従って、毎日入浴時に洗ったり、消毒をしたりします。
Q:自分で操作方法を覚えられるか心配です。
PDを始める時にはカテーテル挿入の手術の後、一般的に2週間〜1カ月程入院して操作方法の練習を行い退院までに操作方法を覚えます。難しい操作ではありませんし手順書に沿って病院のスタッフに教えてもらえますので、不安な点がある場合もその場で確認することが出来ます。自宅に帰るにあたって病院で教えられた通りに家でできるのかを心配される方もおられますが、毎日行うことですので自然と慣れてくるようです。
Q:高齢者でもできるのでしょうか? 何歳までならできるのでしょうか?
何歳までならできるという基準はありません。PDは連続して体からゆっくりと毒素や水分を抜く透析方法なので、心臓への負担や血圧の変動が少なく高齢者に適しているという考え方もあります。
90歳を超えてもご自身でPDの操作をされている方もいらっしゃいます。本人では操作ができない場合や一人では不安な場合は、家族や訪問看護師のサポートが必要となります。
高齢者の場合は特にご本人の意志以外に、患者さんの背景や協力者の有無などをふまえて透析方法の選択をする必要がありますので、患者さんと主治医とご家族でよく話し合って決めることが大切だと言われています。
Q:糖尿病性腎症でもできるのでしょうか?
糖尿病性腎症の方でもPDは可能です。腹膜透析液には体の余分な水分を除去するための物質として「ブドウ糖」が含まれていることから、血糖値への影響を懸念される方もいらっしゃいますが、血液透析(HD)と違い毎日連続した透析で血糖コントロールがしやすいとの考えもあります。
また糖尿病の影響により、視力が弱い、手先の動きが悪いことでバッグ交換ができるのかが心配な場合は、透析液バッグとお腹のチューブを殺菌しながら自動でつなぐ機械もあります。
患者さん個々で病態や身体状況は異なりますので、PDに興味をお持ちでしたら病院に相談してみてください。
Q:費用はHDと違いますか? また、APDを使うと費用がかかるのでしょうか?
透析治療にかかる費用は高額ですが医療費の公的助成制度が確立されていますので、必要な手続きを行うことで医療費の自己負担は軽減されます。HDでもPDでも患者さんの個人負担分の費用は変わりません。
またAPDで機械を使用する場合も機械を使わないCAPDの場合と自己負担額は変わりません。
Q:自宅に置いておく透析液の量はどのぐらいになるのでしょう? 自分で薬局から持ち帰れますか?
透析液は毎日数リットル使用しますので、薬局から患者さんご自身が持ち帰るのは大変です。そこで医師の処方に基づき、透析液のメーカーから自宅まで宅配してもらうのが一般的です。
一回の宅配で届く透析液の量は、おおよそ畳一畳分程度(※)です。
Q:PDを行うために専用の部屋がいりますか?
PDを行う部屋は掃除の行き届いた清潔な場所であれば専用でなくても構いません。ただしペットは入れないようにし、バッグ交換時は人の出入りも無いようにするか、部屋にいる人にはマスクをしてもらうようにします。
PDでの生活に関する疑問・質問
Q:旅行には行けますか?
PDは腹膜透析液と必要な器材(カテーテルの先を閉じるためのキャップなど)があれば行えますので、旅行先に透析液と器材を持っていく、またはあらかじめ送っておくことで旅行中でも自宅と同じように治療を続けることができます。国内旅行はもちろん海外旅行も可能です。
旅行先への透析液等の送付は、患者さんご自身で行われている方もいらっしゃいますし、透析液メーカーの配送サービス(有料)を利用している方もいらっしゃいます。
Q:運動はできますか? どのような点に気を付ければ良いでしょうか?
適度な運動はPD患者さんにも大切だと言われています。ただ、始める際にはまず主治医に相談して「ご自分にとっての適度な運動」はどの程度なのか、アドバイスを受けていただくと良いでしょう。
なお腹膜透析液の貯留中は腹圧がかかる運動(鉄棒や腹筋を使う運動など)は避けてください。また運動後はカテーテルの出口部をシャワーで洗浄するなどして、清潔に保つことに気を付けてください。
Q:バッグ交換の時間は毎日きっちり同じでないといけないのでしょうか?
基本的には医師に指示された交換の時間にバッグ交換を行いますが、日常生活の中でそれが多少ずれてしまうこともあると思います。どの程度であればずれても問題が無いのかを、主治医にあらかじめ相談しておくと安心です。
Q:災害が起きた時はどうすれば良いのでしょうか?
PDは腹膜透析液と器材(カテーテルの先を閉じるためのキャップなど)が手元にあり、交換場所が確保できれば治療を続けることが可能ですので災害に強い透析方法と言われています。
万が一災害に遭いご自宅以外の場所へ避難する場合には、かかりつけの医療機関と透析液メーカーに知らせ、腹膜透析液を避難場所に届けてもらえるようにします。実際に東日本大震災の時にも避難所でPDを続けられた方がいらっしゃいます。
その他の質問
Q:腹膜炎になると聞きましたが、大丈夫でしょうか?
「腹膜炎」はPDの合併症の一つで、お腹のカテーテルを通じて細菌が入ることによる感染等でおこります。腹膜透析液の交換時の手洗いやマスク着用をきちんと行い清潔に気を付けること、出口部を清潔に保つことなどが感染症予防につながります。なお透析液バッグや接続システムの進歩などにより、PDが日本で導入された頃に比べ腹膜炎の発症は少なくなっています。
Q:PDは何年ぐらい続けられるのでしょうか? なぜ、HDのように長期間できないのでしょうか?
PDは自分の身体の中にある「腹膜」を使って透析を行いますが、HDで使われる人工の膜と異なり、生体の膜である「腹膜」の働きは残念ながら永久に保たれるわけではありません。PDを長く続けていると腹膜が劣化し「透析膜」としての働きを十分に果たさなくなり、別の合併症を起こすことがあります。さらにPDを始めて3年くらいすると残っている腎臓の機能低下も進み尿量も減ってくるため、PDだけでは透析が足りない状態になることもあります。個人差はありますが一般的には、PDが続けられる期間は5年〜8年くらいと言われています。
その後の治療としては、腎臓移植、HD、または、週1回程度HDの助けを借りてPDを行う併用療法という方法があります。
Q:いずれHDになるなら、PDをする意味はあまりないように思いますが?
患者さん個々の考え方やライフスタイルによるのではないでしょうか。いずれHDに変更しなければならないのであれば、最初からHDが良いと言う方もいらっしゃいますし、続けられる期間に限りがあってもPDから透析を始める方も多くいらっしゃいます。PDから透析を始める方は「仕事を退職するまでの数年間は自宅で治療して仕事を続けたい」「楽しみにしていた定年後の生活をこれまで通りの生活リズムで過ごしたい」「PDをしている数年間の間に、できるだけ多くの国を旅行したい」といった考えをお持ちです。また、「PD卒業生」からは「本格的な透析を始める前に、心と生活の準備ができた貴重な数年間だった」という声も聞かれます。
3回の連載を通じてPDの基本、PDを始めてからの生活、そしてよくいただく疑問・質問をご紹介させていただきました。
連載の最後に実際にPDをおこなっている患者さんが「ちょっと不便と思っている点」と「PDをおこなって良かったと思う点」を情報誌「スマイル」のアンケートからご紹介いたします。
PDでちょっと不便と思うこと
- 腹膜透析を知らない人が多いこと
- 透析液の交換中に急な来客(宅配便が届いた時など)に対応できない
- 交換時間が気になりゆっくり外出できない
- 外出中や旅行中に交換する場所を探す時
- 1日4回バッグ交換が負担な時があった(APDに変えて解決した)
- カテーテル出口のケアを毎日すること
- 清潔に注意しなければならないこと
- 排液の片づけとゴミを捨てるのが面倒
- お腹に液が入っているのでお腹が張っている感じがする
PDを行って良かったと思う点
- 病院に行く回数が少ないこと
- 仕事を休まずに他の人と同じように仕事ができること
- 毎日勤務できる、残業もできる
- 通信制の学校に入学し卒業できた
- 生活の時間を自分なりに決めることができる
- 透析をする時間が少し自由にできること
- APDなので昼間はふつうに生活できること
- 家にいて何でもできるから少しは人のためになると思う
- 毎日家で暮らせて自由になんでもできることが一番うれしい
- 透析しながら今までしていたことがなんでもできる
- 海外旅行にいけたこと
- 他人に頼らず一人でできること
- 自分で管理しているという自負がある
- 人生設計をもう一度じっくり考えたこと!
- 血液透析に入る前の準備ができた
- 大好物の果物を食べられる
「透析が必要です」と告げられたら、体調のこと、これからの生活のこと、さまざまな不安を感じることと思います。是非医療スタッフの皆さんにご相談いただき、ご家族ともこれからの生活を支える透析について話してみてください。
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