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コロナ禍で減った感染性胃腸炎が今冬は増加
~透析している方・腎臓病の方は手洗いを入念に
2022.3.7
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今冬も感染性胃腸炎が各地で流行しました。
感染性胃腸炎とは、細菌やウイルスなどによって腹痛や下痢、嘔吐などを引き起こす感染症です。夏は細菌が原因のものが多く、秋から冬はノロウイルス、ロタウイルスなどのウイルスが主な原因となって流行し、12月から翌年1月頃までがピークです。
透析をされている方や腎臓病の方は罹患すると重症化するリスクがあるため注意が必要です。今回は感染性胃腸炎が流行している原因をはじめ、罹患した際の症状、予防方法について解説します。
感染性胃腸炎の患者数がコロナ禍以前の水準に
感染性胃腸炎の原因は冬に流行するノロウイルスが広く知られています。
国立感染症研究所によると、2020年の感染性胃腸炎の報告数は、それまでの10年間の同報告数を下回っていました。これは新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴って入念な手洗いが習慣化し、感染性胃腸炎の予防にもつながったためと考えられています。
しかし2021年の冬以降、感染症胃腸炎の報告数は以前の水準に戻りつつあるのです。
感染性胃腸炎が以前の水準に戻ってしまった原因の一つとして、アルコール消毒が定着したことによる「手洗いの不足では」という声が医療原現場から寄せられているそうです。
新型コロナウイルスにはアルコール消毒が有効だとされていることから、手指を消毒する頻度は非常に増えました。しかし、ノロウイルスをはじめとする感染性胃腸炎を引き起こすウイルスはアルコール製剤が効きにくく、予防には十分な手洗いが欠かせません。
アルコール消毒を過信し、つい手洗いを疎かにしてしまう人は少なくないかもしれませんね。感染症対策の基本に立ち返り、改めて日ごろの手洗いをしっかり行いましょう。
透析をしている方や腎臓病の方が感染性胃腸炎に注意すべき理由
集団感染しやすい環境下にいる
ここからは、数ある感染性胃腸炎の中でも、昨今流行中のノロウイルス感染症に関してお話しします。
ノロウイルスの特徴としてよく知られているのが、感染力の強さと、感染しても症状が出ない「不顕性感染」によって多くの人がノロウイルスに感染してしまう可能性が高いことです。
ノロウイルス感染症は、人が集まる施設や病院などでの集団感染が毎年報告されています。一般に透析室は大勢の方が空間を共有し数時間に渡って治療を受ける環境ですので、感染が拡大し集団感染が起こりやすい環境と言えます。感染症全般に言えることですが、施設の医療スタッフの指導にしっかり従って感染症対策を行ってください。
罹患しやすく重症化しやすい
ノロウイルス感染症の主な症状には吐き気や嘔吐、下痢、腹痛、微熱などが挙げられます。通常こうした症状は1~2日程度で治まり、健康な人は軽症で済む場合もありますが、透析をされている方や腎臓病の方はさまざまな要因で免疫機能が低下しており、症状が重症化する可能性が高くなります。これは感染症全般について言えることです。
さらに、現時点ではノロウイルス感染症に対する治療薬はなく、治療は嘔吐や下痢を軽くする、水分を補給するなどの対処療法しかありません。そのためできる限り感染を避ける努力が重要なのです。
また、透析をしている方は脱水によるシャント閉塞にも注意が必要です。
嘔吐や下痢が続くと脱水を起こしやすくなります。日頃から厳しい水分制限をしている場合は、より脱水のリスクは高くなります。
年配の方は吐しゃ物を誤嚥することで誤嚥性肺炎を引き起こしたり、吐いた物を喉に詰まらせて窒息したりする恐れもあるのでより注意が必要です。
ノロウイルスの感染を予防するために
ノロウイルスの感染経路は主に以下の5点です。
- 患者のノロウイルスが大量に含まれるふん便や吐ぶつから人の手などを介して二次感染した場合
- 家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところでヒトからヒトへ飛沫感染等直接感染する場合
- 食品取扱者(食品の製造等に従事する者、飲食店における調理従事者、家庭で調理を行う者などが含まれます。)が感染しており、その者を介して汚染した食品を食べた場合
- 汚染されていた二枚貝を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
- ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合
ノロウイルスは多くが経口感染で、ノロウイルスに汚染されたカキなどの二枚貝を十分加熱せずに食べた際や、ノロウイルスが付着した手指で触れた食材を食べて感染します。
ノロウイルスは熱に弱いため、食品の中心部を85〜90度で90秒以上過熱しましょう。しかしノロウイルスは感染力が非常に強く、感染した患者の吐しゃ物が付着したカーペットより12日以上経ってから感染した報告もあります。ノロウイルスは乾燥すると空中に漂い、それが口に入って感染するリスクもあるため、吐しゃ物や汚染された物は次亜塩素酸ナトリウムなどを使ってすぐさま適切に処理し、室内を素早く換気することが重要です。
加えて、日常の予防として重要なのが入念な手洗いです。
石けん自体はノロウイルスには無効ですが、手指の脂肪などの汚れを落とすと同時にウイルスも取り除けるため、手洗いの時間や回数を増やすことでより予防効果が上がります。
ハンドソープで10秒もみ洗いした後に流水で15秒すすぎを2回繰り返すことで、手洗いしない場合と比べてウイルスは約1万分の1まで減らせます。
手洗いのタイミングや意識してもらいたい点は以下の通りです。
- 手洗いを行うタイミング
- ①トイレの後
- ②料理の前
- ③食事の前
- ④帰宅後
- ⑤下痢や嘔吐等の汚物処理やオムツ交換等を行った後
(手袋をして処理しても必要)
- 手洗いで意識してもらいたいポイント
- ①爪を短く切る
- ②指輪や時計類は外す
- ③石けんは十分泡立てる
- ④爪ブラシなどを使用して細かい個所も丁寧に洗う
- ⑤すすぎは温水による流水で十分に行う
- ⑥清潔なタオル又はペーパータオルで拭く
詳しい手洗い方法については厚生労働省の資料をご覧ください。
ノロウイルスは少量が体内に入るだけで感染します。
透析をしている方が発熱や下痢などの症状が出現した場合はもちろんのこと、同居する家族に感染者が出た場合も、透析に行く前に必ず施設へ連絡し、指示を受けましょう。
【執筆後記~基本の重要性】
「新型コロナウイルスの感染拡大で、手洗いや手指の消毒の重要性は日々取り上げられており、しっかり対策している方がほとんどだと思いますが、長期化による慣れや気の緩みで、手洗いなどの対策が疎かになっている方は少なくないのではないでしょうか。
手洗いは感染症対策の基本中の基本ではありますが、今一度ご自分の手洗い習慣を見直してみていただけるとうれしいです。
参考
- 国立感染症研究所「感染性胃腸炎とは」(2022/2 アクセス)
- 国立感染症研究所「IDWR 2022年第5号<注目すべき感染症> 感染性胃腸炎」(2022/2 アクセス)
- 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」(2022/2 アクセス)
- 神戸新聞「コロナの陰で…『感染性胃腸炎』流行 兵庫の患者数、過去5年で最多」(2022/2 アクセス)
- NHK「News Up アルコール消毒の盲点?増える感染性胃腸炎」(2022/2 アクセス)
- 上越地域で「感染性胃腸炎」流行 2年ぶり警報基準超える (2022/2 アクセス)
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