管理栄養士の栄養サポート体験談~あるある話~腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのための じんラボ
【第3話】身内だからこそ上手くいかない!? 腎臓病の食事療法での家族のあるある話
2024.5.20
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在宅訪問管理栄養士として腎臓病食サポートをしていると、家族の関係性が見えてきます。今回は家族のあるある話を2つご紹介します。
妻あるある~心の負担が大きい~
あなたの家で、毎日食事を作るのは誰ですか?
食事を作るご家族には、このような悩みが多いと感じます。
「自分の料理が罪に感じる…」
「私の作った食事で、腎臓が悪化してしまうのではないか…」
この悩みが積み重なると、
「メニューを考えるのがつらい」
「毎日の食事を作るのが苦痛」
「私まで病気になった気分」
に変化していきます。
もともと料理が得意でない方には、食事療法は一層辛いものかもしれません。
『食事づくりは妻の役割』が暗黙のルールのご夫婦がいます。私の感覚では60歳以上に多い気がします。昭和型の家庭モデルと言いますか、夫は外に出て仕事をし、家事や育児など家庭のことは妻が守ってきた世代です。
このようなご家庭で、夫が腎臓病になると、食事の管理は全て妻任せになります。
病院の栄養指導を受けても、本人(夫)にとっては
「妻が作ってくれるから、量は調節できない」
「毎日作ってくれる妻に、料理を直してほしいなんて言えない」
となり、わかってはいるけど食生活を変更しづらい状況の方にたくさんお会いしました。
家での食事は、腎臓病食を熱心に勉強した妻から「あれもダメ、これもダメ」と言われてウンザリしたり、食べる楽しみをあきらめている方もいました。
一方、妻の方は、
「病院でまた注意された」
「血液検査の結果が悪くなるのは、私の料理が悪かったのかしら…」
「私が作る料理は、夫を死に向かわせているの?」
と生活に支障が出るほど精神的に追い込まれてしまう人もいます。
私はこのようなご家族に出会ったら、必ずこう伝えます。
「ご本人には、自分の体なので自分で管理していただきましょう。ご家族は、『食事療法をお手伝いする』という考え方でいきましょう」と。
夫も同席された場合には、直接お伝えしますので本人も納得されます。
このように伝えると、ほとんどの妻は「そうですよね!」と、表情が明るくなります。
夫の命を背負っているようなプレッシャーを感じていたのが、解放されたのだと思います。
こんなご感想をいただいたことがあります。
「菜々子先生から、『外食もOKですよ。前後の食事で調整すればいいのです』と言われて、とっても気が楽になりました。それ以来、週1~2回は外食に出かけ、夫が何を注文しようとも気にするのをやめました。2人の良い気分転換になっています」
「腎臓病食(治療用特殊食品)の注文は、夫自身がカタログを見て注文するようになりました」
この変化は、とても良いと思います。自分が食べたいもの・好きなものを選べることが、楽しみにつながります。通販で届いた商品が口に合うかどうかも自己責任で、納得した上で次の注文に活かすことができます。
お仕事から手が離れて時間に余裕がある場合、自分の体のことは自分で管理してみてはいかがでしょうか。ご自分が一番良く理解していた方が、不安は減ります。
”上げ膳据え膳”スタイルの日本の古き良き夫婦関係もステキなのですが、お互いの負担にならない良い関係でいきたいですね。
親子の関係性あるある
サポートの依頼で連絡をくださるのは、実は娘さんが一番多いです。両親の状況を心配して、インターネットで必死に調べて情報収集したりします。
このようなご家族のサポートをしていると、「親子の関係性あるある」に気づきます。
親達は、子ども達に心配をかけまいと、詳細を話さない。
娘は心配だから、病状の詳細が知りたい。でも、突っ込んで聞けない。
第三者の私を挟めば上手くいくかと、オンラインで繋いでチャレンジしてみるも、逃げるように出かけてしまう…ということもありました。
今まで大病をせず元気でおられた人は、腎臓病の診断をされたことに弱さや恥ずかしさを感じるのか、家族を頼ることをしません。
親子だからこそ、お互いに言い方がきつくなって、余計に話しづらくなってしまうこともあります。
過去のお客様で、「半年かけて両親を説得して、やっと申込みました!」という、根気強く説得した娘さんもいらっしゃいました。実際ご両親にお会いして話してみると、「気が楽になった。なんだ、もっと早く管理栄養士さんに会えばよかった」という感想をいただきます。
知らない者に、自分の体や生活の話をするのは勇気がいるかもしれませんね。
家族の言うことは素直に受け入れられない傾向があります。身内のアドバイスには、わかってはいるけど反発心を抱いてしまう。
心配している家族は、「こうすればいいのに…」「なんでわからないの?」と、きつい言い方になったり、逆に遠慮して何も言えなくなってしまう。
これは、私も同じです。
私が管理栄養士でも、夫や両親には、なかなか健康の話は伝わりません。家族は仕事先でお客さんから聞いた話や、テレビで見た情報をもとに行動しているようです。
だから、考えを押し付けるのではなく、雑談の一つとしてしゃべり、サラッと流すようにしています。ヤキモキしますが、何度も話していればいつかきっと伝わると信じています。
時には、家族よりも第三者(医師・看護師・管理栄養士など)からの言葉のほうが心に届きやすいこともあるので、活用してみてください。
一生付き合う家族ですから、気長に根気よくいきましょう。
おわりに
3回にわたって、①たんぱく質制限、②病院、③家族の「あるある話」をご紹介しました。いかがでしたでしょうか。
どの話もみんな悪気はなく、立場が違うと考え方のすれ違いが起きてしまう事例ばかりです。きっかけは腎臓病食ですが、人と人との関わり合いなので、コミュニケーションが大切です。
皆さんには、食事療法の範囲の中でも楽しい食生活を見つけていただきたいと願い、今後も活動していきます。
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