じんラボ ファンキー館 OPEN!

[ 新規会員登録(無料)] または [ ログイン ]

腎臓病(慢性腎臓病:CKD)・透析と正しく向き合い、知って、共感して、支え合って、自立する。
基礎知識やQ&Aコミュニティ、透析管理ツールやサポート情報など、元気に生活するためのすべてがここに。

じんラボリサーチ

【第9回】腎臓病・透析患者の70%以上がうつ病・抑うつ経験者!?
患者を取り巻くメンタルケア環境の実態

2017.12.4

文:じんラボスタッフ

緑の文字の用語をクリックすると用語解説ページに移動するよ。

じんラボ をフォローして最新情報をチェック!

image

実施概要

調査目的

人工透析が日本に導入されたのは1950年代と言われています。その後医療技術の進歩や透析器の性能向上により腎不全患者のQOL(生活の質)は飛躍的に向上し、近年の透析療法では長期生存が可能になりました。
それに伴い、透析導入時あるいは長期化する透析療法よって起こる心の問題が注目されるようになりました。患者の抱えるストレスをケアしながら、身体的治療を行うことが重要とする「サイコネフロロジー(精神腎臓病学)」の研究が進められ、浸透してきています。

そこで、患者さんを取り巻くメンタルヘルスの実態調査を行いました。

調査方法WEBアンケート
調査エリア全国
調査対象腎臓病、透析患者 男女年齢不問
調査期間2017年3月31日(金)〜4月7日(金)
有効回答数95名

調査対象詳細

性別
男性 48 50.5%
女性 47 49.5%
年代
〜30代 13 13.7%
40代 33 34.7%
50代 31 32.6%
60代 14 14.7%
70代 1 1.1%
80代〜 3 3.2%
腎臓病との関わり
CKDステージG1〜G3 4 4.2%
CKDステージG4(保存期腎不全) 3 3.2%
CKDステージG5(透析を受けている) 84 88.4%
腎移植者 4 4.2%
透析歴
1年未満 13 13.7%
1〜2年 10 10.5%
3〜5年 27 28.4%
6〜10年 15 15.8%
11〜20年 16 16.8%
21〜30年 8 8.4%
31年以上 1 1.1%
透析していない 5 5.3%

(Q1)腎臓病発症以前にうつ病を発症したことがあります(n=95)

1 はい 16 (16.8%)
2 いいえ 79 (83.2%)

(Q2)腎臓病や透析がきっかけで、うつ病を発症しましたか(n=95)

1 はい、診断を受けて現在も症状が続いている 5 (5.3%)
2 はい、以前診断を受けたが現在症状はない 13 (13.7%)
3 診察は受けていないが、うつ病と思われる症状がある 18 (18.9%)
4 診察は受けていないが、過去にうつ病と思われる症状があった 31 (32.6%)
5 今までうつ病と思われる症状はない 28 (29.5%)

(Q3)経験したうつ病が原因と思われる自覚症状は何ですか(n=95:複数回答、回答数=238)

1 気分の落ち込み、憂鬱、絶望的な気持ち 56 (58.9%)
2 不眠症 41 (43.2%)
3 意欲の低下 41 (43.2%)
4 思考、集中力の低下 32 (33.7%)
5 食欲不振 18 (18.9%)
6 自殺願望や自傷行為 14 (14.7%)
7 コミュニケーション能力の低下 0 (0.0%)
8 その他 8 (8.4%)
9 自覚症状は特にない 28 (29.5%)

腎臓病や透析をきっかけに7割以上がうつ病や抑うつを経験

心療内科や精神科などを受診し、うつ病の診断を受けた方は18名(19.0%)です。受診はしていないものの、うつ病と思われる症状を経験した方も含めると、全体の7割以上(70.5%)の方が腎臓病や透析をきっかけにうつ病や抑うつ状態になったという結果になりました。
またその症状は「気分の落ち込み、憂鬱、絶望的な気持ち」が58.9%と最も多く、次いで「不眠症」、「意欲の低下」が43.1%と同数でした。


透析特有のストレス緩和にメンタルケアは必要不可欠

透析療法は腎臓移植をしない限り生涯続き、患者は機械に支えられて生命を維持する特殊な環境におかれます。
また透析を受け続けるには、仕事、経済面、家族、人間関係、食事など、今までの生活を大きく変えなければならない場合も多く、生き方や人生観にまで影響を及ぼしかねません。そして、食事や水分制限、運動は医師の指示のもと患者自身が主体的に管理・ケアしなければならず、透析患者特有の非常に大きな不安やストレスとなっています。
さらには日常の透析による身体的苦痛に耐えながら、薬の副作用や合併症、病気の予後等の治療に対する不安にも苛まれます。

特に透析導入時は、ストレスの要因となるこれらの不安やさまざまな苦悩が一気に押し寄せることから、精神的に追い詰められて抑うつ状態になることが多いと言われています。
たとえ透析導入をある程度予測していたとしても、患者は医師から「透析導入」の告知をされると相当のショックを受け「絶望、不信、怒り」などのさまざまな感情に苛まれます。気持ちを整理して乗り越えていくために必要な時間にはかなりの個人差があり、誰もが受容にたどり着くとは限りません。

その後も「不信、否認、不安、いらだち」の感情を何度も行き来し、生命維持のために透析は受けても「イヤでたまらない」、「現実を受け入れられない」という心と身体が乖離した状態が続きます。そんな心理状態のまま生涯を終えるケースもあることから、透析患者にとってメンタルケアは必要不可欠だと考えられています。

透析患者の心理的段階
カテゴリー 気持ち・感情
fig09mental.png  ショック・絶望 現状の直視困難(何かの間違いだ、自分の腎臓はそんなに悪くない)
絶望感(人生終わった、死んだ方がましだ)
 不信・否認 不信(医者のいうことは信じられない)
否認(透析なんかしたくない、一生続くなんて無理だ)
取引(導入をいかに遅らせるか、他に方法はないのか)
 不安・いらだち 自己憐憫(なんで自分だけが)
罪悪感(医者の指示を守っておけばよかった)
不安(この先どうしたらいいのか、一生続けなくてはいけないのか)
怒り(こんな身体になったのは親のせいだ、医者の治療が悪かった)
悲観(生きる希望がない、誰にも理解してもらえない)
 妥協・受容 透析効果の自覚(透析前より体が楽になった)
諦め(透析をすれば生きることはできる)
拒否感情の低下(なんとか透析を継続できそう)
納得(現実を受け入れなければ)

社会福祉士として相談を受けてきた経験、患者当事者としての実体験と、参考文献を元に透析導入告知以降の患者の心理的段階をじんラボが独自にまとめた表

(Q4)不安や悩みを相談できる相手はいますか(n=95:複数回答、回答数=188)

1 家族、親戚 59 (62.1%)
2 友人、恋人 36 (37.9%)
3 医療従事者 29 (30.5%
4 患者仲間 21 (22.1%)
5 職場の上司や同僚 9 (9.5%)
6 SNS投稿による不特定多数の閲覧者 7 (7.4%)
7 カウンセラー、ソーシャルワーカーなどの相談専門家 4 (4.2%)
8 相談ホットラインなどの行政機関 2 (2.1%)
9 いない 21 (22.1%)

(Q5)自分なりのストレス発散法はありますか(n=95)

1 ある 47 (49.5%)
2 一応あるが、あまり発散できていない 35 (36.8%)
3 ない 13 (13.7%)

(Q6)現在の通院施設には、メンタルケアの相談ができる環境はありますか(n=95:複数回答、回答数=96)

1 特に相談できる環境はない 58 (61.1%)
2 心療内科や精神神経科の専門医がおり、診療・相談ができる 9 (9.5%)
3 院内カウンセラーがいて相談できる体制になっている 5 (5.3%)
4 院内スタッフによる相談窓口がある 4 (4.2%)
5 提携しているメンタルクリニックがある 2 (2.1%)
6 その他 4 (4.2%)
7 気にしたことがないから分からない 14 (14.7%)

(Q7)通院施設内にメンタルケアの相談ができる環境があれば利用しますか(n=95)

1 機会があれば利用する 44 (46.3%)
2 分からない 25 (26.3%)
3 ぜひ利用したい 20 (21.1%)
4 利用しない 6 (6.3%)

求められるメンタルケア環境

「現在の通院施設には、メンタルケアの相談ができる環境はありますか」の問いには、約6割(61.1%)が「特に相談できる環境はない」と回答しました。
また「通院施設内にメンタルケアの相談ができる環境があれば利用しますか」の問いには、「ぜひ利用したい」「機会があれば利用する」と利用に対して肯定的な回答が全体の67.4%にのぼり、患者の要望に対し医療施設側の環境整備は十分ではない実情が見える結果となりました。


自分に合ったメンタルケアを選択できる環境の整備を

通院施設でのメンタルケアの要望が見られる一方、記述回答では「通院施設は一生通い続けることを考えると、気まずくなりたくない」、「施設や治療に対する不満や不安は相談しづらい」などの理由から、通院施設内においてメンタル面の相談をすることに躊躇する意見が見られました。また、同じ透析患者だからこそ理解し支え合うことができる「ピアサポート」、「気軽にいつでも相談できるホットラインや専用WEBサイト」などを要望する意見も多く見られました。

同じ透析患者といっても、病状、抱える苦悩、性格、取り巻く環境などは千差万別で、相談したい相手や方法も一様ではありません。医療者のみならず、透析に関わる誰もがメンタルケアは軽視できない非常に重要なことと捉え「患者が必要とするタイミングで、さまざまなチャンネルの中から自分に合ったメンタルケアを選択できる環境の整備」が透析患者の心を守る手段の一つになるのではないでしょうか。

※個別の返信は行っておりません。

参考

  • 春木繁一(2010)『透析患者のこころを受けとめる・支えるサイコネフロロジーの臨床』メディカ出版
  • 竹本与志人,杉山京,桐野匡史,村社卓『血液透析患者の心理的段階とその変容過程』 岡山県立大学保健福祉学部紀要 第22巻1号2015年 81〜89頁
  • 森田夏実『血液透析療法を受けながら生活している 慢性腎不全患者の“気持ち”の構造』 聖路加看護学会誌 Vol.12 No.2 July 2008
  • 田上功,渡會丹和子『血液透析療法を受ける患者の心理的特徴に関する研究の分析』医療保健学研究 2号:175-183頁 (2011) ISSN 2185-2227
こんな情報が知りたい、私も何か記事を書きたいなど、「じんラボリサーチ」にご意見をお寄せください!

ご意見をお寄せください

PR

ぼやいてみる