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世渡りナビ(就業・社会生活)

透析者が就労し、働き続けるために
【第2回】5つの課題・問題を踏まえた解決策

2013.11.26

文:所長

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前回は、「透析者の就労をはばむ壁」とは何なのかを改めて考え、5つに整理をしてみました。今回はその5つの課題・問題それぞれの解決策について考えてみたいと思います。


1. 透析による時間的な制限

透析による時間的な制限

透析者にとってこれはとても大きな問題となります。透析時間が「週3回×4時間(私は5時間)」に加え、止血時間、往復の通院時間を加えると、1週間で少なくとも15時間程度の拘束になります。

会社員の場合は就労後(退社後)に透析へ向かう方が多いと思います。

夜間透析は22時迄という施設が多いため、逆算すると18時迄にベッドに到着し穿刺をしなければいけないことになります。私自身がそういう状況で、14年間サラリーマン生活を送っていた間には、仕事が忙しく18時には透析を開始できず4時間に満たない透析をすることも多々ありました。

解決方法として端的に言うと、“透析のやり方を変える方法”と、“仕事のやり方を変える方法”が考えられます。

前者で言えば、「在宅透析」や「オーバーナイト透析」があります。
まだまだそれぞれに課題はありますし、また対応してくださる施設も少ないのが現状ですが、検討する価値は十分にあります。

後者“仕事のやり方を変える方法”ですが、これは会社の業種・職種によってその働き方は多様であり、会社員の場合にはその会社の勤務制度に依るわけですが、例えば裁量労働制、月間フレックスタイム制度などがある場合には、透析の日は早めに退社させていただく等の工夫は制度上可能ですし、「在宅勤務」が可能な会社も存在しています。

または、会社組織に属さず、個人事業主、フリーランス、また起業して経営者となるという選択肢もあります。

言うまでもなくその選択は、ある程度自分で時間の都合が付けやすく、また自分のやりたいこと、実現させたいことが出来るという大きなメリットがある半面、収益面で安定した実績を上げるには厳しい道のりがあることを覚悟する強い意思と信念が求められます。


2. 体調の問題

体調の問題

体調が悪い場合、まずはその体調の回復に努めることは言うまでもありません。 そのうえで透析日と自身の体力・年齢、及び興味・感心、を客観的に考慮し、業種・職種・雇用形態の検討をしましょう。


3. 通院の問題

通院の問題

「1. 透析による時間的な制限」の項でも書かせていただきましたが、透析自体最低4時間以上かかりますし、その時間に加えて通院時間がかかります。もちろん地域によって難しいこともあると思いますが、「自宅」「職場」「透析施設」が無理のないバランスで位置付けられるように慎重に検討する必要があります。

「自宅」を引っ越すということは色んな意味で大変負担が大きいことです(もちろん就職先に社宅があれば別ですが…)。

「職場」も既に就労されている場合は変えられないといっても良いでしょう。

であれば、雇用形態(正規社員・派遣社員・アルバイト・パート)に伴って透析をする曜日・時間帯の検討していくことになります。

一番検討しやすいと思われる「透析施設」の選択にあたっては、インターネットはもちろんですが地元の患者会(腎友会等)に電話をして相談してみることも有効です。

就労場所から透析施設まで、また透析施設から自宅までの交通機関の精査も大変重要です。それぞれ余裕を持った時間で計測しましょう。


4. 企業側の問題

企業側の問題

現状は、透析者に対する企業側の理解はまだまだ進んでいません。私が大学卒業後就職した会社でも、当時は透析者である社員の方は私の知る限りで他に1名いらっしゃいましたが、私自身の配属された職場の皆さんはあまり透析のことはご存知ないようでした。

そう感じた時に、仕事をしていくうえで他の方々に迷惑をおかけしないため、そしてこれからこの会社に入社してくる透析者のためにも、透析についての理解を深めてもらおうという思いが生まれ、また責任感のようなものが芽生えてきていました。

患者会でもパンフレットを作成し、企業に透析者を理解していただく活動を進めていますが、当事者一人一人が自覚を持って働くことは自身だけではなく透析者全体のためにも大切なことであり、企業の理解につながるのではないかと思います。


5. 透析者自身の問題

透析者自身の問題

表現として難しいところではありますが、簡潔に言うと「病気に甘えてしまう」という気持ちが少なからずあるのではないかと思うのです。
誤解を招く言い方かも知れませんが、これは私自身を振り返っても思いますし、また他の透析者を見ても思ったことでもあります。

体調の本当のところは本人しか分かりませんが、私が常々心していたのは、「無理せず、甘えず」という言葉です。
人間、健康な人でも完璧に生活することは出来ません。透析者であれば尚のこと、心身両面での不調・不安があります。

それでも自分をある程度律する気持ちを持とうという心構えは仕事に関してだけではなく、透析をしながら自分らしく充実した生活を送るためにも必要なことではないかと強く思うのです。


このように、前回より「透析者の就労をはばむ壁」に関して色々と書かせていただきましたが、書きながら改めて思ったことは、一人一人それぞれ就労をはばむ壁は異なり、またそれらは複雑に絡まっているということです。
ここでは典型的なものとして5つにまとめさせていただきましたが、当然それ以上存在しているのが現実だということです。

そこで今後、じんラボとしては「リアルに」「具体的に」働きたくても働くことができない透析者に、直接力になりたいと強く思うのです。

その策について現在検討し、各方面への働きかけをはじめましたので、今後ご報告させていただきたいと思っています。

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所長

所長
一般社団法人ペイシェントフッド代表理事。社会福祉士。透析歴31年。
14年間勤めた一般企業を退職後、福祉職を経て、2010年9月に株式会社を設立し、2018年4月からは一般社団法人ペイシェントフッドに法人格を変更。
長い年月にわたり「治療を受ける」という「受け身の立場」で医療と関わってきましたが、腎臓病を経て、透析を受ける当事者として、その経験・想いを「腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのために」役立てられないかと一念発起し、起業しました。
「じんラボ」はみなさんと一緒につくりあげていくコミュニティです。
「ひとり一人の「生きる力」が、医療を支える、希望ある社会」の実現に皆さんと共に歩んでまいります!どうぞよろしくお願いします!

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