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食生活研究室

料理研究家 宮成なみの夢を叶えるごはん日記の作り方
【第6回】具沢山のスープ 〜保存期の食事療法〜

2016.6.20

文:宮成なみ

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前回までのお話

退院してから私の本当の食事療法がはじまりました。
私の病気、結節性動脈周囲炎は一生治ることがありません。腎臓を壊すきっかけとなった原疾患の進行を遅らせるため、また少しでも今ある腎機能を守るためにも食事療法は欠かせません。
1日でも、1分でも、1秒でも長く、生きていられる時間を作りたい。
早く健康になって好きなことを好きなだけできる時間が作りたい。
そのために食事療法をがんばろう、そう思っていました。

退院してから、わが家の食卓は大きく変わりました。
まず、みそ汁やスープが具沢山になりました。
病院から手渡された、「制限があるものを多く含むものリスト」のなかに書かれた肉、魚、豆類、卵、牛乳、乳製品、野菜、果物、調味料…。みそ汁やうどんの汁、ラーメンの汁などの汁モノは、塩分が高いため摂れません。しかし、食べられないものがたくさんある私の膳に汁物までなかったら、ものすごく寂しい食卓になる。その解決法が【野菜スープを具沢山にすること】でした。

残り野菜で作った具沢山スープ。コンソメを使わず、塩麹に漬けた豚バラ肉をベーコンの代わりに使いました。

▲ 残り野菜で作った具沢山スープ。コンソメを使わず、塩麹に漬けた豚バラ肉をベーコンの代わりに使いました。

お風呂で想像してもらうとわかりやすいかもしれません。

同じ大きさの湯船に、同じ量のお湯がはってあったとして、大きなお父さんが入ればお風呂のお湯は溢れます。しかし、小さな子どもが入ってもお湯は溢れません。
これと同じで、具がほとんど入っていないスープは汁がたくさん入りますが、具がたくさん入っているスープは、実際入っている汁の量が少なくても多く入っているように見えます。また、野菜は煮炊きすることでカリウムが水に流れでるので、スープの汁さえ飲まなければ具はカリウムを気にせず食べられました。

器

▲ 写真のような皿の縁(ふち)が広くて大きいもので、浅いスープ皿がオススメ。量はそんなに入らないのに、たくさん入っているように見えて食卓が豪華になる。このお皿は有田陶器市で見つけました。同じような形の皿が100円均一でも手に入ります。

そして、私の膳にはフォークがついていて、妹や父の膳にはスプーンがついていました。フォークなら汁をすくわず、具だけをすくう事ができるからです。

「そんなガリガリでガサガサ肌じゃオトコのひとりもできんばい。しっかりたべて早う元気になりなさい」

そうやってスープ皿によそわれる具沢山のスープ。
小さな希望の光でしかないけれど、元気になりたい。
食べたものが血となり肉となって、私の身体をつくる。
食べたものが私の身体になって、未来をつくる。

温かいスープを頬張りながら、私の食事療法が始まりました。

本当にごはんで元気を作ろうと思ったら、小さな苗木が月日を重ねて、ゆっくりゆっくりと年輪を描くように、本当にゆっくりとしたスビードでしかないけれど、私のボロボロだった肌は少しずつ潤いを取り戻し、7年半と言う月日をかけて私は健康だった頃の身体に戻ることができました。

打合せの合間の軽めの昼食。

▲ 打合せの合間の軽めの昼食。

あれから24年。
今でも私は、具沢山のスープを作ります。

この日は、パンとスープとサラダに、友人が差し入れしてくれたお惣菜の唐揚げ。
サラダは水にさらしてカリウムを流したもの。スープは、ベーコンの代わりに塩麹で漬けた豚肉と、冷蔵庫の残り野菜とみじん切りにしたニンニクをオリーブオイルで炒め、ローリエと一緒に煮込んで塩と黒胡椒で味を調えました。
ベーコンや塩麹に漬け込んだ豚肉と野菜そのものから、とても良い出汁が出るからコンソメ要らず。どちらも作り置きでまとめて多めに作ります。食べるときは温めて出すだけです。

あの頃と同じように、友人の膳にはフォークとスプーンを。私の膳にはフォークだけを添えています。カリウムが多く流れ出たスープを友人にはたっぷり、私は少しだけ。同じ鍋から同じスープをよそいます。

中央の小皿は、左から粒マスタード(黄)・バジルソース(緑)・トマトソース(赤)

▲ 中央の小皿は、左から粒マスタード(黄)・バジルソース(緑)・トマトソース(赤)

塩分制限のある私と、炎天下でも自転車に乗り営業に回る友人とは塩分の摂取量が違うから、私にちょうどいい塩加減と、友人にちょうどいい塩加減が違います。

そこで、小皿の薬味の登場です。100均で集めた小さな器にスパイスやソースを少し出し、スープに落して味の変化を楽しみながら食べられるようにしています。自分のその日の体調や、摂取できる塩分量に合せて調整できるように。薬味代わりの小皿が並ぶとなんだか手間がかかった食卓に見えるけれど、マスタードはチューブから出しただけ、トマトソースは瓶から出しただけです。トマトソースがないときは、トマト・ケチャップでもじゅうぶん美味しい。

友人は、スープにマスタードを落したり、トマトソースを溶かしたり、そこにパンを浸したり、たまにパンにバジルソースを塗ってスープを啜り、あっという間に平らげてパンとスープのおかわり。
私はスープにマスタードを少し落して、パンにはバジルソースをつけて食べました。

大好きな誰かと食卓を囲むとき、同じもの食べたいと思う。
そして、一緒に「美味しいね」って言いたいって思う。
いつでも食卓は楽しく温かくて、身体の栄養を充電するだけでなく、心の栄養も充電する場であって欲しいと思う。
「昼からも営業、頑張ってね」と言いながら、友人におかわりのスープをよそうとき、きっと祖母や母はこんな気持ちで私を見つめ、こんな気持ちで温かいスープを出してくれていたんだなぁとしみじみと思う。

「美味しい!」の笑顔がみたくって、もっとたくさんの工夫がしたくって、できないことはたくさんあるけれど、今あるもので、今できることで作り出せる幸せを大切な人と分かち合いたくて、私は料理研究家になりました。作り方は少しずつ変わってはいるけれど、私が発病し保存期から透析になっても、ずっとずっと作り続けている、たくさんの想いと元気が詰まったスープの話。

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宮成なみ

宮成なみ

福岡出身11月3日調味料の日生まれの料理研究家。
16歳の時に「現代の医学では治すことのできない難病」結節性動脈周囲炎を発症。主治医の「唯一病気の進行を遅らせる方法が食事療法」という言葉に希望を託し、金なし、コネなし、資格なしのなか10年越しの夢を叶え、27歳で料理研究家となる。現在は週3回、1回6時間の透析をこなしながらテレビ、ラジオなどのメディア出演、食育講演会、商品開発など、「ムリせず、気負わず、頑張りすぎず、できることからはじめよう」をモットーに冷蔵庫にあるもので、誰でもカンタンに作れて元気になれる台所のコツを発信している。
楽しい食卓株式会社 代表取締役、料理研究家
宮成なみ公式ウェブサイト:http://miyanari-cook.com

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